金融機関が議事堂襲撃事件前後に取引をした顧客情報を捜査当局に引き渡していたとされる問題に関し、下院共和党は6日に公表した中間報告書で、捜査機関は令状発行などの法的手続きを回避して国民の金融情報にアクセスするため、疑わしい取引報告(SAR)システムを巧妙に利用していると非難。金融プライバシー保護のための新たな安全策を講じなければならないと警告した。
下院司法委員会が内部告発者の証言をきっかけに調査に着手したのは今年5月。これに先立つ公聴会で、FBIの内部告発者は、バンク・オブ・アメリカが議事堂襲撃事件の前後3日間にデビットカードまたはクレジットカードを使用した顧客リストを「自発的に、法的手続きなしに」FBIに提供したと証言した。また、同じく内部告発者として出席した元FBIの上級情報分析官ジョージ・ヒル氏は、「ワシントン D.C. とその周辺地域」での取引をターゲットにした「膨大なリスト」が提供されたとしたほか、銃器購入者は購入時期や場所に関係なくリストの上位に加えられたと述べていた。
司法委員は報告書で、「連邦法では、法執行機関が何らかの法的手続きを経ずに金融機関の顧客情報を調査することは認められていない」とした上で、「FBIはこのプロセスを回避するために、金融機関に”疑わしい”個人の情報を提供して、金融機関にSARを提出するよう促している」と指摘。「SARは法的手続きを必要としないため、機密性の高い極めて重要な情報にアクセスすることを可能になる」と加えた。
金融機関は銀行秘密法に基づいて財務省の金融犯罪捜査ネットワーク(FinCEN)に疑わしい取引を報告(SAR)することが義務付けられている。提出されたすべての SAR は、FinCEN、銀行監督機関、法執行機関を含む承認を受けたユーザーだけがアクセス可能なデータベースに一元管理されている。(Connecting the Dots…The Importance of Timely and Effective Suspicious Activity Reports)
報告書によると、連邦捜査官らは「MAGA」や「Trump」などの用語で顧客の取引をソートするよう要請したほか、「Dick’s Sporting Goods」や「Cabela’s」、「Bass Pro Shops」といった銃販売のチェーン店名をキーワードにして取引を照会するよう銀行に提案したことを示す文書も入手したという。
下院共和党は、FBIは一般的に”疑わしい”とみなされる人物リストを「最初から提供」することで、SARsの枠ぐるみをひっくり返し、憲法修正第4条の「個別具体性」および「相当な理由」要件に違反したと非難した。
報告書ではまた、「連邦捜査当局はますます金融機関と密接に協力して、事実上無制限に個人の金融データにアクセスして金融監視を継続するための新たな方法や技術をテストしている」としたほか、今後現金に変わる「代替手段の広範な普及」によって「監視の範囲外にある金融活動」は消滅し、経済活動の参加条件として私生活の詳細の開示をますます余儀なくされると指摘。「新たな保護措置を取らなければ、政府と金融機関はアメリカ人の機密の金融データを吸い上げ、官僚の手に渡し、わずかに残された金融プライバシーを侵食し続けるだろう」と警告している。