ユーモアに潜む危険:ミームが陰謀論コミュニティを強化するカラクリ

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New Africa/Shutterstock

ユーモラスなネットミームは、ただの楽しい画像だとあなどってはいけない。普段多くの人々の目に触れるミームの一部は、陰謀論者によって戦略的に使用され、そのコミュニティーをより強固にする特定の役割を担っているという。バース大学の研究者らが、ミームに秘められたダークな側面を明らかにした。

研究者らは、陰謀論コミュニティにおけるミームの役割を探るために、2020年から2022年に掲示板サイトのレディットにシェアされた544の新型コロナウイルス関連のミームを分析し、そこから156のテンプレートを特定した。

それらを「コンテンツ分析」したところ、使用されているキャラクターたちは陰謀を企む者を表す「迫害者」、大衆を表す「愚か者」、陰謀論の信奉者を表現する「英雄」の3つの役割が割り当てられていることが浮かび上がった。

その一方、ミームが伝達する「文化的テーマ」を分析すると、「欺瞞」、「妄想」、「優越性」というテーマに集約されることがわかった。これらの文化的テーマは、キャラクターに割り当てられた役割と密接に結びついており、迫害者は主に「欺瞞」に、愚か者は「妄想」に、英雄的役割は「優越性」に特徴的に現れていることが判明した。

例えば、最も頻繁に登場するキャラクターは、主体性の欠如を表すグレー色で無表情な「NPC Wojak」(NPCはゲーム用語のノンプレイヤーキャラクターに由来)と呼ばれるキャラクターで、「妄想」のテーマに繰り返し使用されている。

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例として挙げられた4コマ漫画のようなミームでは、NPC Wojakは、インフルエンザの発生率が低下したのは皆がマスクを着用したおかげと述べながら、コロナの悪化の原因を聞かれると、皆がマスクを着用しないからだと矛盾した主張をする。陰謀論コミュニティーでは、こうしたストーリーを通じて、大衆のリアクションや主張に彼らが非論理的だと考えるものをからかっている。

このほか上位には、ミュージシャンのドレイク、ガールフレンドと一緒に歩く男性が振り返って別の女性を見る「気を散らされたボーイフレンド」など、大手SNSでもよく目にするキャクターが挙げられている。

論文の筆頭者のエミリー・ゴドウィン氏は声明で、「この研究から、ミームがオンラインの陰謀論者コミュニティの文化を強化するために重要な役割を果たしていることがわかる」と説明。「メンバーは”陰謀論的世界観”を正当化するミームに引き寄せられ、これらのミームは彼らのストーリーテリングの重要な部分になる。そのシンプルで共有しやすい形式により、有害な信念が急速に広まることが可能になる」と、ミームが陰謀論の普及に果たす役割を強調した。さらに、文化的テーマは、コミュニティの「意見の相違を緩和する役割を果たし、些細な違いによる分裂の可能性を減少させる。この結束により、危険なイデオロギーが根付き、繁栄する」と陰謀論カルチャーを安定化させる可能性にも言及した。

また、研究に加わったブリット・デイビッドソン博士は、「偽善的なエリートや一般大衆をあざ笑ったりすることに基づく」ミームのユーモアが、「新しいメンバーを引き付ける原動力となっている可能性が高い」とも指摘。「誤情報の全体的な文脈や影響」を知らずに人々が陰謀論に引き寄せられる危険を語った。

研究者らは、ミームが文化的普及や創作力だけでなく、陰謀論者コミュニティの安定に役立つツールであることを理解するには、デジタル表現の変化し続ける状況に対するさらなる研究が不可欠だと述べている。

Mashup Reporter 編集部
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