エアフォースワンの新機体の納入計画の遅れに業を煮やしたトランプ氏。政府の合理化推進の懐刀、イーロンマスク氏に完成を早める方策を検討するよう指示したほか、納入を待つ間、政権内部では中古のジェットを代替機として購入する案も浮上しているという。ニューヨークタイムズが報じた。
現在の大統領専用機として交互に使用されている2機は、いずれも初飛行から30年以上が経過している。1971年に導入されたボーイング747-200Bを改造したものだが、同モデルは1990年以来生産されていない。
後継機の契約は、第一期トランプ政権下の2018年に国防総省とボーイング社の間で成立した。当初は2024年の納入を予定していたが、サプライチェーンや、下請け企業とボーイング間の紛争、熟練整備士の不足などで計画に遅れが生じ、2027年以降に延期された。現在ボーイングの幹部は、トランプ氏の任期中に間に合わない可能性さえ示唆しているという。
タイムズによると、トランプ氏は先週土曜日にパームビーチ国際空港に駐機しているボーイング747-8型機を視察したという。機体の現在のオーナーは不明であるものの、登録番号がカタール王室が最近まで使用していたものと一致した。グローバルジェットという会社が運行しており、トランプ氏の訪問後カタールに戻ったという。
代替機案がどこまで本気で話し合われているのか明らかでないが、元当局者は同紙の取材に対して、大統領専用機としての仕様に耐えうる設備を大幅に縮小しない限り、改修に数年かかる可能性があると語っている。
この一方で、マスク氏は、トランプ氏に対して過剰な設計による不必要な設備が生産の遅れにつながっていると伝えたほか、関係者に対するセキュリティクリアランスの要件を廃止すべきだとも主張しているという。
現在、後継機のプロジェクトの関係者全員に対して高度のセキュリティクリアランスが適用されており、これは大統領または副大統領と接触する軍人が受けるものと同等の審査が必要とされている。ボーイングの従業員から下請け業者、機械工から電気技師、高度なシステムに関係のない仕事に携わるものまで一様に求められる。部分的に緩和すれば、製造工程の迅速化や労働者の獲得が容易になる可能性がある。さらにマスク氏は試験飛行の時間要件にも疑問を呈しているという。
ただし当局者の中には、トランプ氏とマスク氏によるスピードの追求が、空飛ぶホワイトハウスとも呼ばれる国家安全保障に欠かせない機体の安全要件を危険にさらすのではないかと危惧する声も上がっているという。
後継機は747-8モデルをベースとしており、改修が完了すれば、空中給油が可能で、核爆発による電磁パルス攻撃への強い耐性、赤外線誘導ミサイルを逸らす防衛設備が備わるとみられている。2019年にトランプ氏は自ら考案した配色として、白・赤・紺を基調にしたデザインを発表した。ただし、紺色の部分は「特定の環境下で熱が加わる」ため、連邦航空局の資格試験を追加する必要があることが判明。バイデン氏の判断により、現行の「ロビンエッグブルー」よりもやや深みのあるライトブルーが採用されることになった。