昨年の選挙キャンペーンからトランプ氏の取り巻きに加わった女性スタッフに、周囲が気を揉んでいるという。
今月発売されたマイケル・ウォルフ氏の4冊目となるトランプ本『ALL OR NOTHING』によると、ケーブルTV「ワン・アメリカ・ニュース」の元番組ホストだったナタリー・ハープ氏(33)は、2022年からトランプ氏の「何でもがかり」としてキャンペーンに加わった。「いつも魅力的な女性に囲まれている」というトランプ氏お決まりの演出に合致した「フォックスニュースタイプのブロンド」女性で、「細身で高身長、ストレートの長髪にショートスカート」のルックスは、他の女性スタッフらと共通している。トランプ氏は自らが「チャーリーズ・エンジェル」と呼ぶこうした女性たちと、「叔父のようで、いちゃいちゃした」関係性を築いているのだという。
ハープ氏は熱心なトランプ信奉者であり、2020年に共和党大会でスピーチを行なった際には、トランプ政権下で成立した承認前の治験薬へのアクセスを可能にする「試す権利」法のおかげで、末期の骨ガンを克服したと明かしていた。
そんなハープ氏は、トランプ氏が日課とする朝のゴルフに付き添い、ニュースやメールを知らせるという役割に就く。ワイアレスプリンターを積んだゴルフカートでボスの後を追っかけて、取捨選択した書類の束を渡すという一風変わった方法だが、これを通じてトランプ氏の情報の「重要な門番」となっていった。
ハープ氏がトランプ氏に伝えるのは耳障りのよい情報ばかりで、彼女が頼りにするソースの一つは、極右が支持する陰謀論サイト「ゲートウェイ・パンディッツ」だと報じられたこともあった。ある時、トランプ氏のジェット機内で、突然の離陸によりテーブルから散らばった書類がスタッフを唖然とさせた。「全員が目にしたのは、古い記事と怪しいウェブサイトのプリントアウト、トランプ信奉者の奇妙なサイトからダウンロードしたファンのアート作品の寄せ集めだった。彼はこれらのすべてを、まるで国家の機密情報であるかのように貯めていた」。
ハープ氏は書類に自らしたためた手紙も忍ばせていた。「あなたに喜び以外の何物ももたらしたくない」、「あなたを失望させたくない」、「私にとって大切なのはあなただけ」といった「親密ぶり」を思わせる文章で、トランプ氏の法務チームや政治チームに出回り懸念を引き起こした。さらに、ハープ氏の役割は連絡対応やSNSの投稿へと拡大。トランプ氏と日々テキストでやりとりする仲間の議員らからは、肩書きのないハープ氏からの連絡に混乱の声が上がったこともあった。
ただし、周囲の二人を引き離そうとする試みは、「彼女が近くにいようとする倍増した努力」によって打ち消され、逆にその執念深さでトランプ氏の感心を買う結果を招いた。「他の人が彼の注目を求めるときに割り込む」ことによって、重要性がますます増していったという。
関係者の間では、トランプ氏の感情がハープ氏が渡す切り抜きやレポートに左右されるように思えることが増え、ハープ氏自身が会議に割り込んで、プリンターを使って議題から注意を散らそうとするなど、影響力を行使するかのような振る舞いも目立つようになった。さらに、「アグレッシブに注意を求め、それが拒絶されたときの彼女の激怒」が、警備チームの懸念材料に浮上。「彼女の手紙を所持していたシークレットサービスは、彼女の行動の奇妙さに気づき始めていた」。
トランプ氏の次男、エリック氏も「法的問題の展開に意見する妙に権威的で要求の多いナタリー氏」の存在をいぶかり、「彼女は誰だ?誰が彼女にやらせているのだ?誰が彼女に権限を与えたのだ」など、法務チームにいらだちを表明したこともあったという。
トランプ氏が一人の候補者から大統領となったことで、ハープ氏の役割を改めて心配する声も上がっている。トランプ氏の詳しい報道で知られるニューヨークタイムズの記者、マギー・ヘイバーマン氏は選挙後、ハープ氏がホワイトハウスの「大統領執務室のすぐ外」にデスクを設ける見通しだと説明。巨額の賠償命令を受けたE・ジーン・キャロル氏との2度目の裁判中にトランプ氏がSNSに発した「奇妙な」投稿とハープ氏の関与を指摘しつつ、「束縛も審査もない情報」を提供する存在が、指揮系統にますます関与する可能性に懸念を表明している。