マスクバブルが崩壊する?専門家が警鐘

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世界一の金持ち、イーロン・マスクの資産が揺らいでいる。ブルームバーグのビリオネアインデックスによると、日曜日の時点で3,300億ドルだったマスク氏の純資産は月曜日、290億ドル(約4兆円)減少し3,010億ドルになった。現時点で3,070億ドルとわずかに上昇したが、年初に比べて1,260億ドル縮小している。

電気自動車メーカー、テスラの株価下落が資産縮小に影響した。同社の株価は10日に15%下落し、過去3ヶ月間で合計40%以上を低下した。10日の急落により、テスラの時価総額は約1270億ドル消失。トランプ氏が11月に大統領に選出されて以来の上昇分をすべて失った。

厳しい市場競争に加え、政府効率化省の取り組みやトランプ氏との密接な関係がもたらすブランドダメージを背景に、テスラの売上げは世界中で減少している。

タイム誌によると、ヨーロッパにおける1月のテスラ車の販売台数は前年比で約半分に落ち込んだ。欧州のEVの最大市場であるドイツでは、電気自動車の需要の伸びにも関わらず70%以上減少した。そのほか、ポルトガルで50%、フランスで45%、スウェーデンで42%、ノルウェーで48%と軒並み大幅に減少している。オーストラリアでも2月の販売台数は前年に比べて70%以上落ち込んだ。

国内では、マスク氏に対する反発がテスラの商品や施設を標的とした過激な抗議活動へと発展している。先週火曜日、マサチューセッツ州にあるテスラの充電ステーションが放火され、その2日後にはオレゴン州にあるテスラの販売店に7発の銃弾が発射された。発砲により少なくとも自動車3台が損傷した。7日はコロラド州北部のディーラーで放火があったと報じられた。その翌日にはマンハッタンのテスラショールームに350人以上の抗議者が集まり、逮捕者6人を出す事態を招いた。

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マスク神話の崩壊?

当の本人は「長期的には大丈夫」と投稿するなど余裕の姿勢だが、専門家はマスク氏の行く末に警鐘を鳴らしている。

ハーバード・ビジネス・スクールの教授、ミヒル・A・デサイ氏は、ニューヨークタイムズに寄せたエッセイ「マスクのツイートで膨らんだバブルが崩壊するかもしれない」で、マスク氏の事業は、スティーブ・ジョブズやビル・ゲイツ、ジェフ・ベゾス、マーク・ザッカーバーグ、ラリー・ペイジなどテック界の巨人が築き上げた「真に巨大なビジネス」と比べれば「あらゆる指標」で劣ると指摘。莫大な富を築いたのは主に「金融カルト」によるもので、カルトに魅了された投資家のおかげで、「経営判断や企業統治、法外な報酬、さらに政界への進出」といった疑問視されるべき問題を免責されてきたと続けた。

デサイ氏はマスク流の富創造のプロセスを以下のように説明している。

「どんな後退も取るに足らない、いかなる達成も英雄的と思うような野心的なビジネスを考え出す。興奮した投資家から莫大なリターンを個人的に得るため、自身をこの野心的ビジネスの背後にいる熱狂的な天才と位置付ける。SNSを活用して自分の象徴的な立場を固め、信奉者の熱意を高め続ける。信奉者らの熱意は事業に対する懐疑主義者を撃退するほど熱く、それはより奇抜なアイデアを売り込む中でも続いていく。この時点で好循環が生まれる。他の投資家が、法外な利益を求めて自分のほかの会社の株にも群がり、その評価額はさらに高まる。富が強化され、ビジネスの天才としての評判が高まる」。

こうしたサイクルは「投資家らが金利が異常に低い時期に得られる乏しいリターンの代替を求めている時、テクノロジーの力に対する魔法のような思考が将来的な問題のリスクへの懸念を抑え込んでいる時、そして個人投資市場が株取引をオンラインギャンブルに近いものへと変えている時」にうまくいく可能性がある。

デサイ氏はさらに、政治進出の背景にも言及。「このプロセスの最終段階は、政治分野で権力を固めることで、法外な野心を永遠に育み続けることができるようにすることだ。もしマスク氏がうまくやっていれば、彼の帝国は難攻不落のものになっていたかもしれない」と述べた。

「テスラやスペースXなど、まったく新しいビジネスを生み出したことは称賛に値する」と評価しつつも、低迷が一時的であろうと、マスク氏が築いたビジネスが、彼を世界一の富豪に押し上げた評価額より「はるかに低い」ことを投資家が認識するにつれて熱狂は収まると予測。マスク氏はトランプ氏と同じく「基本的に金融ショーマンであり、その成功は主に投資家を巧みに扱うことによるもの」とした上で、「金融市場が富と権力を生み出せるなら、その両方を解体するのも同じくらい簡単だ。そして、これがマスク氏とトランプ氏の破滅となるかもしれない」と警告した。