トランプ氏 ゴルフ勝利宣言で再浮上、「いんちきプレー」の数々

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Donald Trump
L.E.MORMILE/shutterstock

トランプ大統領は16日、自身のゴルフクラブで開催した選手権で優勝を手にしたと発表した。

本人曰く、これが最後になるかもしれない。

SNSの投稿で「フロリダ州パームビーチ郡のトランプ インターナショナル ゴルフクラブで、おそらく最後になるであろうゴルフ・クラブ・チャンピオンシップで優勝した」と綴っている。

トランプ氏のゴルフへの情熱は相変わらずで、地元メディアによれば、1月20日の就任以来ゴルフに出かけるためにパームビーチの自宅を訪れたのは今回が6度目になる。

ホワイトハウスはこの前日、ゴルフウエア姿のトランプ氏がイランが支援する武装組織フーシ派に対する爆撃を見守る様子をSNSでシェアしていた。

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なお、ワシントンポスト紙は、トランプ氏は1期目の4年間で、261ラウンドをプレーしたと推定している。これが正確であるならば5.6日に1回という計算になる。

今回の優勝宣言に対して、トランプサポーターから祝福の声が上がる一方、SNSには批判も数多く投稿されている。

あるユーザーは「トランプ氏は今日、インフレを止めるために懸命に取り組んでいる」と皮肉。別のユーザーは「まさに経済の天才だ。インフレが高騰する中、彼は勇敢にも自ら授与した権威あるゴルフトロフィーを獲得した。次回はマー・ア・ラーゴのまさに公式の大統領執務室で、史上最高の大統領メダルを自分に授与するだろう」と揶揄した。

ユーザーの一部からは、トランプ氏のゴルフマナーの悪さやイカサマ疑惑を示唆するコメントも。

「彼はクラブのチャンピオンシップでは負けなしだ。たとえそこにいなくても。みんなフェイクだとわかっているのに、主流派メディアが本物のように報道するだろう」。

「トランプが自分のコースで買ったというデタラメの主張を目にするたびに、トランプのゴルフのイカサマに関するリック・ライリーと彼の本を思い出す」。

勝つために手段を選ばない「いんちき」の数々

スポーツ・イラストレイティッドやESPNのコラムニストとして知られるリック・ライリー氏は2019年に発売した著書『Commander in Cheat』(イカサマ司令官)で、トランプ氏の大人気ない所業の数々を暴露している。

ライリー氏によると、2019年当時、クラブ選手権で18回優勝したと豪語していたトランプ氏だが、そもそも自分のゴルフクラブ以外で勝ったことがない。その上、あるクラブについては、オープン前の日付の優勝記録もあった。18回の大半は「スーパーシニアクラブ選手権」(ライリー氏曰く、ガターにカバーをかけてボーリングをプレーするようなもの)で、ベッドミンスターのゴルフクラブには、街を離れていた最中に開催されたトーナメントの優勝を祝う表彰盾まで飾ってある。関係者によると、優勝者の名前を知ったトランプ氏は、「この男にいつも勝っている」と難癖をつけて、従業員に自分の名前を載せるよう命じたとのことだった。

ライリー氏は「クラブ選手権」優勝の主張について、16回が虚偽、2回が不完全だと結論づけている。

ゴルフ仲間やスタッフの間では、トランプ氏はいんちきの常習犯として知られている。

トランプ氏がメンバーになっているとあるニューヨークのクラブのキャディーたちは、トランプ氏が頻繁にボールを蹴ってフェアウェイに戻すことから、影で「ペレ」のあだ名を付けている。

カジュアルなゴルフでは、カップとの距離が2~3フィート程度であれば、打たなくても入ったものとしてあげること(ギミー)があるが、トランプ氏の場合は8フィートでもギミーを宣言して、ボールを拾ってしまう。ただし相手がそれをやろうとすると、「君は打った方が良い」などと警告する。

俳優のサミュエル・L・ジャクソンは、明らかに池ポチャしたショットで、トランプ氏のキャディーが「ボールを見つけた」と宣言したことがあったと回想している。女子プロゴルファーのスザンヌ・ペッタースン氏は、トランプ氏がボールを森の奥深くに打ち込んでも、到着時に必ずフェアウェイの真ん中にがあることから、キャディーに高額な報酬を支払っているのではないかと推測している。

ライリー氏自身もトランプ氏の衝撃の行為を目の当たりにしている。

ウェストチェスターで一緒にプレーした際、トランプ氏は「君が気を散らせた」、「打つ直前に鳥が飛んできた」、「足が滑った」などと理由をつけてはペナルティーなしで打ち直しをした。最も驚くことに、ライリー氏が5打でカップインさせたところ、グリーン外で5打目を迎えていたトランプ氏は「これで良しとしよう」と言って、ボールを拾い上げた。

ゴルフ史上前代未聞の「ギミー・チップイン」(チップショットを打たずに入ったものとみなす)に遭遇したライリー氏が「ギミーチップインを取ったのですか?」と尋ねると、トランプ氏は「そうだよ。君がすでに5打で終えたからね」と臆面もなく回答。カートに乗ってさっさと走り去ったという。

プレー後の不正疑惑もある。

その日、トランプ氏は「非常に怪しい」スコア77で終えたが、帰りの車中で75になり、夕食の頃には72まで減る勢いだった。

このほかにも、チップショットを打ったふりをしてカップに行ってポケットに用意していたボールを拾い上げる、相手のボールとすり替えるなど、トランプ氏は勝つためには手段を選ばない。

ライリー氏がインタビューした人々の90%がトランプ氏が公然と不正をするのを経験したと答え、そのうちの多くが、一緒にプレーするのをやめたと答えたという。

ここまでくるとあっぱれと言いたくなるが、どうしてそうまでして勝ちたいのか。『The Dangerous Case of Donald Trump』(トランプ危険なケース)の共著者でハーバード大学の精神科医、ランス・ドーデス博士はライリー氏に、「彼はすべてにおいて一番でなければならない。勝てないこと、一番でないことに耐えられない。彼の成長のかなり早い段階で始まっていたに違いない」と説明。「自己愛性人格障害」のすべての特徴を示しており、道徳観や他人にも権利や感情があることを理解できない「非常に病んだ人間」だと分析している。