「出たくなかった」ヴァル・キルマーが『トップガン』アイスマン役を引き受けた意外な理由

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ヴァル・キルマー
Denis Makarenko

映画、テレビ、舞台と多方面で活躍したハリウッドのスター、ヴァル・キルマーさんが1日、65歳で死去した。キャリア初期に出演した映画『トップガン』(1986年)は空前のヒット作となったが、実は当初、この作品への出演を望んでいなかったという。

2021年に出版された回想録『I’m Your Huckleberry』の中で、「役が欲しいと思わなかったし、映画にも関心がなかった。ストーリーにも興味が湧かなかった」と振り返っている。マネージャーによって半ば強制的にオーディションを受けたが、「愚かな、または間抜け」なファッションで会場入りし、セリフを読むにも身が入らなかった。合格を告げられると、自信がつくどころか「意気消沈」したという。

しかし、トニー・スコット監督がかけた一言が出演意欲を沸かせるきっかけとなった。監督は帰ろうとするキルマーさんをつかまえると、「ヴァル、台本は不十分だとわかっているが、もっとよくなる。ジェット機を見るまで待ってくれ。ぶっとぶから」と説得。まるで「6歳児」であるかのように口と手で戦闘機の物真似を始めたという。さらに、「君がシリアスな俳優だということも知っている。でもこの役は君が完璧なんだ。まるで君のために書かれたもので、君じゃなくてはならない」と話し続けた。

この時の心境を、「彼は私の意識にとって破壊玉だった。こんな情熱をもって扱われたことはなかった」と述べ、「トニー・スコットのイギリス流の熱意」に「自尊心の高揚」を覚えたと明かしている。結果、キルマーさんはトム・クルーズ演じる主人公のライバル役「アイスマン」で存在感のある演技を披露。『バットマン フォーエヴァー』や『ドアーズ』などの主演作とともに、『トップガン』が代表作となった。

主役のトム・クルーズについては、「彼は初日からたった一つの目標に集中していた。映画史に残る偉大なアクションヒーローになることだ。深夜までセリフを覚え、起きている間ずっとスタントを完璧にすることに時間を費やしていた。その献身は称賛に値する」と、尊敬の念を込めて振り返っている。

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キルマーさんは2014年に喉頭がんを患い、化学療法や放射線治療を受けた。病を克服したものの、気管切開によって声帯を損傷し、以前のような発声が困難になった。2022年の続編『トップガン マーヴェリック』への再出演は、トム・クルーズの強い希望によるものだった。制作関係者は公開当時、「トムが彼なしでは作らないと言い張ったんだ」と明かしている。

遺族によると、キルマーさんは1日の夜、ロサンゼルスで家族や友人に見守られながら死去した。死因は肺炎だった。