ブルーオリジン歴史的「女性だけの宇宙飛行」が炎上しているワケ

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DFree/shutterstock

宇宙から帰還したジェフ・ベゾス氏の婚約者、ローレン・サンチェス氏に、インタビュアーを務めたカリッサ・トムソン氏は「あなたは正式に宇宙飛行士になったのです。おめでとうございます」と祝辞を送った。

14日、ベゾス氏が創業したブルーオリジンは、有人宇宙船「ニューシェパード」の打ち上げに成功した。クルーは全員女性で構成され、ジャーナリストでヘリコプターパイロットのサンチェス氏をはじめ、ポップスターのケイティ・ペリー、ジャーナリストのゲイル・キング、航空宇宙エンジニアのアイシャ・ボウ、宇宙生物学者で公民権活動家のアマンダ・グエン、映画監督のケリアンヌ・フリンが搭乗。同社の発表によると、飛行時間は10分21秒、最高高度は106kmに達し、地球と宇宙の境界とされるカーマンライン(高度100km)を突破した。

女性のみの宇宙飛行は、1963年にソ連のワレンチナ・テレシコワが単独飛行して以来、62年ぶりの出来事となった。しかし、トムソンの「宇宙飛行士」という表現は適切だろうか?

デイリーメールによると、連邦航空局(FAA)は2021年に商業宇宙飛行士の認定基準を厳格化し、「公共の安全に不可欠な活動、または有人飛行の安全に貢献した活動」の実証を追加要件とした。この判断はFAAの裁量に委ねられるが、同紙は「搭乗者は自律飛行中のロケットで景色を楽しんだだけ」と指摘し、6人が要件を満たさないと批判した。

では彼女たちのミッションは何だったのか?

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ブルーオリジンのニューシェパード事業部門責任者、フィル・ジョイス氏は「ストーリーテラー」として「未来の世代にインスピレーション」を与えることと説明。サンチェス氏も出発前の『ELLE』誌インタビューで「この女性たちはすべて、独自のストーリーテラー」で、「私たちは各自が感じたことを拡散できる」と曖昧な表現で応じた。

批判が噴出

今回のフライトに関して、メディアや一部の著名人から辛辣な意見が寄せられている。

ニューヨーク・タイムズのアマンダ・ヘス氏は、フライトは「宇宙旅行者」の「娯楽目的」で、主なミッションは「無重力を体験して、地球を上空から眺めて、その様子をライブ配信すること」と指摘。「女性が世界有数の富豪男性と肩を並べ、資本主義の退廃の最たるものを享受できる自由を手に入れたことを示しただけ」と痛烈に評した。さらに、サンチェス氏がMonseのデザイナーに宇宙服を依頼した点に触れ、「ブランディングに利用した」と批判。「プロの女性宇宙飛行士の実績に触れない」姿勢も問題視した。

ガーディアンのモイラ・ドネガン氏は「アメリカン・フェミニズムの完全な敗北」と断罪。「科学とフェミニズムの進歩を可能にしたかつてのアメリカへの倒錯した葬式」「道徳的空虚さで高い理想を嘲笑する見世物」と表現した。サンチェス氏らがインタビューで「つけまつげやヘアメイク」といったおしゃれを強調した点に言及し、「優先順位が間違っている」と指摘。「宇宙旅行がもたらすであろう高貴で人間的な願望に結び付けず、女性を化粧と見た目に強引に結びつけることこそが女性蔑視である」と糾弾した。さらに、「自分たちを女性の代表」に位置付けながら、「結果的に提示したのは女性の未来に関する極めて反フェミニスト的なビジョン」であり、「男性への依存」を前提とした「愚かな姿」と非難を続けた。

著名人では、オリヴィア・マンが「世界にはもっと優先すべき課題がある」、「何が目的なの?ちょっと貪欲だと思う」と苦言。オリヴィア・ワイルドはインスタグラムで「10億ドルで買えるミーム」とケイティ・ペリーの帰還画像に皮肉を込めた。ジェシカ・チャスティンはXでドネガン氏の記事をシェアし、静かな抗議を示している。