ノーベル賞経済学者のポール・クルーグマンは、23日にトップニュースとなったベッセント財務長官の会合について、なぜ誰も問題視しないのかと疑問を呈した。
ブルームバーグをはじめとする米メディアによると、22日に行われた投資家との「非公開」の会合の場で、ベッセント長官は、中国との関税をめぐる対立は両国にとって「持続不可能」だと説明した。さらに、両国は緊張緩和の道を見出さなければならないと語り、その緊張緩和は「非常に近い将来」実現すると述べたとされる。会合はJ.P.モルガンによってワシントンで催された。
クルーグマン氏はサブスタックの投稿で、この報道は2つのレベルで深く憂慮すべきだと指摘する。
一つ目は、「重大な政策転換」が密室で明かされた点。クルーグマン氏は「これは大規模なインサイダー取引の布石ではないのか?実際、ベッセントの発言が公表される前に、会合の参加者は間違いなく市場で賭けをしていたはず」と不当性を強調した。
もう一つ、クルーグマン氏が指摘したのは利益相反の可能性。「ベッセント氏は出演料を受け取ったのだろうか?」と述べ、「前政権では考えられないことだったが、今では神のみぞ知るだ。金銭や支援といった形でトランプ氏らに便宜を図り、企業が高額な内部情報を得る時代に突入したのだろうか」と加えた。
ブルームバーグが最初にこの会合を報じた後、S&P500種株価指数は2.5%上昇した。CNNによると、アジア株も上昇し、香港ハンセン指数は2%以上上昇して取引を終えた。日経平均株価は約2%上昇、韓国KOSPIも1.5%上昇して取引を終えた。
トランプ氏ネットの笑い者に
23日、トランプ氏はホワイトハウスの会見でベッセント氏の発言について問われると、「145%は非常に高い。そこまで高くならないだろう」と自ら設定した関税率に言及。「大幅に下がるだろうが、ゼロにはならない」と説明した。また、「彼らは非常にうまくやるだろう。彼らは幸せになると思う。われわれは共に生きて、願わくば協力することになるだろう」とこれまでの敵対的な発言を和らげた。
姿勢をコロコロと変える大統領に、ネットユーザーからはトランプ氏の代名詞「アート・オブ・ザ・ディール」にかけた嘲笑的なコメントやミームが飛び交った。
あるXユーザーは「中国は何もせず、ただ待っているだけで勝利している。トランプ氏の巧みな関税戦争は自分に跳ね返った。これぞアート・オブ・ディールだ」と投稿。別のユーザーからは「トランプ氏は中国に屈した。アート・オブ・ザ・ディール」といった声が上がった。
トランプ氏の変化は中国のネットでも急速に広まったという。「微博(ウェイボー)」では、「トランプ、怖気づいた」というハッシュタグがトレンド入りし、1億5000万回以上の閲覧数を記録したと報じられている。