27日に米ピッツバーグにあるユダヤ教会で発生した、反ユダヤ主義の男性による銃乱射事件で、11人が死亡、警官を含む6人が負傷した。
事件の翌日、米国最大のユダヤ人団体、名誉毀損防止同盟(Anti-Defamation League 略称:ADL)のCEO、ジョナサン・グリーンブラット(Jonathan Greenblatt)氏は、NBCの報道番組に出演し、米国における反ユダヤ主義の高まりに警鐘を鳴らした。
グリーンブラット氏は、ピッツバーグのユダヤ教会銃乱射事件について、「ユダヤコミュニティに対する攻撃の中で、アメリカ史上最も凄惨な事件」とし、ユダヤコミュニティに対するハラスメントや破壊行為、暴力行為が昨年比で57%増加していると語った。増加率は同組織が観測してきた中で過去最大であり、反ユダヤ主義が「ほぼ常態化しつつある」と述べた。
増加の背景について、「政治候補者や公人が白人至上主義者のレトリックを繰り返すことで、反ユダヤ主義が蚊帳の外からメインストリームへと移ったこと」があるとし、ユダヤ人の陰謀やユダヤ人の資金提供者が活動を操っているとする説を唱えることが一般的で、許容される風潮があることを指摘した。さらに、これらをSNSが拡散し、助長していると述べ、「シリコンバレーは問題の一部であり、解決策の一部となる必要がある」と語った。
トランプ大統領は今月5日、最高裁判事候補であったブレット・カバノー氏の抗議活動に、ユダヤ系アメリカ人の富豪投資家のジョージ・ソロス氏が資金提供しているとツイートした。ジョージ・ソロス氏が反トランプ活動の資金を支えているとする主張は、保守派の定番の陰謀論として知られるが、大統領自らが陰謀説をツイートしたことで話題となった。
なお、26日に容疑者が逮捕された爆発物郵便事件では、ソロス氏も標的となっていた。
ユダヤ教会銃乱射の容疑者、ロバート・バウアーズは、SNSで度々、反ユダヤ主義の発言を繰り返していた。ツイッターやGABのプロフィールには、白人至上主義者のシンボル番号の画像を使用し、ヨハネによる福音書(Johen:8:44)の番号とともに、「ユダヤはサタンの子供たちだ。」と記載していた。また、「ユダヤ人がこの世にはびこる限りMAGAは実現しない」「トランプ大統領は国粋主義者ではない」などと主張し、QAnon(キューアノン)を讃えるコメントも投稿されていた。
犯行直前には、ユダヤ人の難民を支援する団体HIAS(Hebrew Immigrant Aid Society)に対し、「市民を虐殺する難民を支援する団体の活動を傍観するわけにはいかない。」と投稿していた。
Gabは、言論の自由を謳うソーシャルネットワークである一方、ネオナチや極端な保守派に人気のメディアで、オルトライト・ツイッターと呼ばれることもある。運営に対する批判も多く、アップルやグーグルはGABのアプリを、ヘイトなどの方針違反であるとし、取り扱いを停止している。さらに、今回の事件を受け、PaypalやStripeといったオンライン決済サービス企業が取引停止を決定したほか、クラウドサービスを提供するJoyentは利用規約違反を理由にサービス停止を発表。また、VergeによるとGoDaddyも24時間以内にドメインを他社へ移行するよう、GABに対して通告したという。
サイトは現在、利用できない状態となっている。同社は声明で「我々は、表現の自由と個人の自由を守るがために、また、正義がピッツバーグの残虐な犯行に下るよう、捜査当局に協力しているがために、メインストリームのメディアから中傷を受けてきた。」と大手メディアを非難。新たなホスティングプロバイダーへの移行のために、「一定期間アクセス不能になる」と発表している。