米議会下院では16日、下院教育労働委員会のボビー・スコット委員長(民主党 バージニア州)が中心となり、連邦最低賃金を15ドルに段階的に引き上げる法案を提出した。
法案には、181名の議員が共同提案者として参加。2019年から2024年まで段階的に最低賃金を引きあげる。2024年以降は、連邦最低賃金を平均収入に連動させる。また法案では、別途定められているチップ収入の多い職業や20歳以下の労働者、障害者の最低賃金も段階的に15ドルまで引き上げ、将来的にこれら規定を廃止することが盛り込まれている。
連邦最低賃金は2007年に通過した法案で7.25ドルに段階的に引き上げられたが、その後約10年間改定されていない。The Hillによると、インフレを考慮した場合、実質の最低賃金は過去50年間下降している。1968年の最低賃金は1.6ドルだったが、2018年の貨幣価値では11.79ドルに相当し、現在の水準よりも60%高い。
スコット委員長は声明で、15ドルの引き上げにより、全国4,000万人の労働者の賃金と生活水準が向上すると発表。賃金水準の向上がコミュニティに還元されることで米国経済を刺激すると述べた。
一方、上院では、バーニー・サンダース議員を中心に、31名の共同提案者によって同じ法案が提出された。
かねてより、現在の連邦最低賃金を飢餓賃金と呼び、引き上げを訴えてきたサンダース議員は、2016年に続き、2020年の大統領選の有力候補の一人と目される。
共和党が多数の上院では、法案の通過は厳しいと見られているが、リベラル派にとっては、2020年選挙を見据えたメッセージとして、発信していきたい狙いがある。
保守派の間では、引き上げそのものに反対をしないが、政府による指定に対して異を唱える声も多い。
ラリー・クドロー国家経済会議(NEC)委員長は昨年、引き上げを「ひどい考え」と述べ、生活費や産業の状況が州によって異なることから、政府が管轄するべきではないと主張している。
トランプ大統領は、 2015年には政府による最低賃金の設定を「この国にとって悪くないことだ」と語っていたが、その後、問題を州にまかせる姿勢に変化させている。
調査機関による分析としては、2014年のオバマ政権時代、最低賃金10.10ドルへの引き上げに関し、議会予算局(CBO)が報告を行っている。同局は、165万人の賃金が上がる一方、50万人が失業すると予測。効果が相殺されることで、貧困層が90万人減少すると報告している。
また、シンクタンクのエンプロイメント・ポリシー・インスティテュートは、仮に2020年に15ドルの引き上げた場合、200万人が失業すると分析している。