2020年大統領選挙で、民主党の候補指名争いに名乗りを上げたエリザベス・ウォーレン上院議員(マサチューセッツ州)は8日、アマゾンやフェイスブック、グーグルなど巨大ハイテク企業の解体を含む、”ITセクターの構造的な改革”プランをブログ記事を通じて発表した。
ウォーレン議員は冒頭、1990年代の独占禁止法違反を巡る司法省対マイクロソフト社の裁判が、グーグルやフェイスブックなどの新たなIT企業の誕生に道を開いたとし、競争を促進することがいかに重要であるかについて述べた。続けて、「今日の巨大ハイテク企業は、経済や社会、民主主義に対してあまりにも大きな力を有している」とし、これらが「競争を脅かし、個人情報を利益のために使用し、市場を歪めている。」と批判。結果「スモールビジネスを阻害し、イノベーションを圧迫している」と語った。
またEC市場の約半分の売り上げをアマゾンが占め、インターネットのトラフィックの70%以上がグーグルとフェイスブックを介したものだと現状を紹介。これらの企業が「我々のネット利用のあり方コントロールしてスモールビジネスと革新を潰し、国民の幅広い利益を自身の経済的利害に置き換えている」とし、民主主義の力のバランスの回復、競争の促進と次世代への技術革新のために、巨大ハイテク企業の解体が必要であることを説いた。
ウォーレン議員によると、これらハイテク企業による市場支配は、「競争を制限するための合併」と「競争を制限するための自社所有のマーケットプレイスの利用」を通じて行われている。合併の例として、フェイスブックによるインスタグラムとワッツアップの買収、アマゾン社によるDiapers.comへの値引き販売の強要、グーグルのWazeとDoubleClickの買収をあげ、長期的に競争と革新を阻害するものだと語った。
マーケットプレイスについては、自社が参加者となることで、競争を阻害する利益相反を引き起こしているとし、「アマゾン社は、アマゾンマーケットプレイスで販売されている商品を模造し、自身のブランドで販売することで、中小企業を潰している。グーグルは、自社のアルゴリズムで、競合する小規模の検索エンジンのコンテンツを格下げすることで、彼らを消滅させようとしている疑いがあり、Yelpなどの評価よりも自身のレストラン評価を優先的に扱っている」と例を挙げた。
巨大ハイテク企業解体の2ステップ
これらの問題解決に向け、ウォーレン議員は自身の政権において2つのステップに取り組むことを表明した。
第1ステップでは、新法を成立させ、ハイテク企業を「Platform Utilities(プラットフォーム公益事業)」と指定し、その他のプラットフォーム参加者と切り分ける。具体的には、全世界での年収が250億ドル以上で、マーケットプレイスを提供する企業は「Platform Utilities」と区分し、マーケットプレイスと参加体の両方を所有することを禁じる。また第三機関に対するデータの転送や共有も禁じられる。プラットフォームについては規模に関わらず、公平で合理的、ユーザーに対する差別のない取引を求める。法執行に関しては、連邦規制当局や州司法長官、損害を受けた企業が、違反した「Platform Utilities」を提訴する権利を通じて、損害賠償を得られるほか、違反した企業には年収の5%の制裁金を科す。
第1ステップを通じて、アマゾン・マーケットプレイスとベーシックス、グーグル・アド・エクスチェンジなどは分割され、グーグルサーチも分離されるという。
第2ステップでは、違法なハイテク企業の合併を無効にすることにコミットした監督官を任命し、現状の法規制を通じて、反競争的な合併の逆転に取り組む。対象として、以下の合併を挙げた。
・アマゾン:ホールフーズ(Whole Foods)、ザッポス(Zappos)
・フェイスブック:ワッツアップ(WhatsApp)、インスタグラム(Instagram)
・グーグル:ウェイズ(Waze)、ネスト(Nest)、ダブルクリック( DoubleClick)
これらステップで、ウォーレン議員は「中小企業には、アマゾンによって廃業に追いやられる脅威を抱かずに商品を販売する、公平な機会が与えられる。グーグルはグーグル検索で競合の商品を降格することで、競合を抑え込むことができなくなる。フェイスブックはユーザーの操作性と個人情報の保護の改善のために、インスタグラムとワッツアップによる真の圧力に直面するだろう」と見通しを述べ、IT起業家はジャイアントと戦うチャンスを持つことができる、と語った。