米アマゾンのジェフ・ベゾス最高経営責任者と愛人のローレン・サンチェスさんの間で交わされたテキストメッセージや画像の流出に関し、ベゾス氏の依頼で調査を行なっていたセキュリティコンサルタントのギャヴィン・デベッカー(Gavin de Becker)氏は30日、デイリー・ビーストにオピニオンを投稿し、サウジアラビアがベゾス氏の電話から個人情報を不正に入手したという結論に至ったと発表した。
調査は広範囲にわたり、ベゾス氏のメッセージや画像を入手していた雑誌ナショナル・エンクワイアラーの親会社であるAmerican Media Inc.,(AMI)の現職または過去の上層部、インテリジェンスコミュニティーに属する中東の専門家、サウジのスパイウエアを追跡するサイバーセキュリティーのエキスパート、トランプ大統領のアドバイザー、サウジ皇太子を個人的に知る人物、ワシントンポスト氏のジャーナリスト、ジャマル・カショギ(Jamal Khashoggi)氏殺害への関与が疑われるサウード・カハタニ(Saud al-Qahtani)の関係者を知る人物などに聴取が行なわれたという。
デベッカー氏は投稿で「我々の調査官と複数の専門家は、サウジの人物がベゾス氏の電話にアクセスし、個人情報を入手したと確信を持って結論づけた。」と述べ、さらに調査結果を連邦当局に引き渡したことを明らかにした。
背景
ベゾス氏が今年1月に、妻のマッケンジー(MacKenzie)さん(48)との離婚の意向を発表した直後、複数メディアが、ベゾス氏とローレン・サンチェスさんが愛人関係にあることを報じた。
中でも、American Media Inc.,(AMI)の子会社の雑誌ナショナル・エンクワイアラーは、2人の間のメッセージの一部を公開。さらにヌード写真の存在をほのめかすなどし、注目を集めた。
なお、AMIのデビッド・ペッカー最高経営者(CEO)は、2016年選挙期間中、元プレイボーイモデルのカレン・マクドゥーガル氏とトランプ大統領の関係のもみ消しに関わっていた。口止め料は、違法な選挙献金にあたるとして、トランプ大統領の元弁護士のマイケル・コーエン氏は実刑判決を受けた。ペッカー氏は刑事免責を受けて捜査に協力したと報じられている。
AMIからの脅迫
2月、ベゾス氏はブログを通じて、AMIから脅迫を受けていることを公表した。脅迫は電話とメールで行われ、電話では、調査をやめなければ、同社が所持するテキストや画像を公開すると脅されたという。
さらにメールでは、素材を公開しない代わりにAMIの提示する一連の提案に応じるよう要求。提案には、AMIの報道活動が政治的動機や政治的力によるものでないことを、ベゾス氏がメディアに発表することなど、不可解な内容が含まれていた。
ベゾス氏はブログで「No thank you, Mr. Pecker」と述べ、要求に応じない姿勢を公表した。
サウジの動機は?
デベッカー氏によると、昨年10月からサウジ政府はベゾスに対する攻撃を開始している。これは、ベゾス氏が所有するワシントンポスト紙が、紙面を通じてジャマル・カショギ氏殺害へのサウジ政府の関与の追及を開始した時期と重なる。
デベッカー氏によると、サウジは、ソーシャルメディアなどを含む、複雑なテクノロジーを使用した攻撃に長けており、昨年10月にサウジはサイバー攻撃をベゾス氏に開始し、Amazon.comやそのサウジ子会社のSouq.comのボイコットなどを含む様々なキャンペーンを展開したという。
またデベッカー氏は、サウジは、アクセス不可能な大量のデータをスマートフォンから形跡を残さずに収集することができるとし、ハッキングはサウジの重要な部分となっていると主張。監視への広範な取り組みが、カショギ氏の殺害にもつながったと述べた。
さらに、デベッカー氏は、サウジのムハンマド・ビン・サルマン(Mohammed bin Salman)皇太子とAMIのデヴィッド・ペッカー(David Pecker)氏の近しい関係が、調査により明らかになったと述べた。この両者の関係は、ペッカー氏が、サルマン皇太子の仲介役であるKacy Grine氏を、トランプ大統領と娘婿のジャレッド・クシュナー氏とのホワイトハウスにおけるプライベートミーティングへ招待したことにもつながったという。
またデベッカー氏は、AMIのペッカー氏が皇太子に会いにサウジアラビアに旅行に出かけていたことも明かした。両者の話し合いの内容は明らかでないとしつつ、皇太子の2018年の訪米に合わせて、AMIが広告の入っていない100ページの雑誌「The New Kingdom」を発行したことに言及。この雑誌で、AMIは皇太子を「32歳で世界を変える、もっとも影響力のあるアラブ指導者」などと、皇太子を特集しているという。