チャック・シューマー(Chuck Schumer)上院院内総務(民主・ニューヨーク州)は19日、商務省(DOC)に対し、中国国有企業の鉄道車両メーカーで、世界最大手の中国中車(CRRC)が、ニューヨークのMTAやその他の地域に導入した新型車両や信号、Wi-Fiなどの徹底調査を求めると発表した。AP通信が報じた。
CRRCは、地下鉄の信号や乗客人数の増加など地下鉄システムの改善を公募したMTAジーニアス・トランジット・チャレンジ(MTA Genius Transit Challenge)で2018年3月に賞を獲得している。その際CRRCは5,000万ドルの投資を行い、新型車両を開発する提案を行った。
シューマー議員は、まだMTAとの契約は締結されていないが、CRRCが計画の一貫として、新たなテクノロジーを地下鉄システムに導入しようとしていると警戒を述べた。
MTAは、これまでにCRRCの車両は購入していないと発表している。CRRCが入札に参加したMTAの新型車両は昨年1月、川崎重工業の米法人カワサキ・レール・カー(Kawasaki Rail Car Inc)が受注している。
MTAの広報担当マックス・ヤン(Max Young)氏は、「堅固で、多層化された、徹底的かつ強制力のある安全基準を設けている。」と述べ安全性を強調しつつ、政府の調査に協力及び支援を行うと表明した。
シカゴを拠点とするCRRC四方アメリカ(CRRC Sifang America)の広報担当ディブ・スモレンスキー(Dave Smolensky)氏はThe Hillに対し、シューマー議員の調査要求に積極的に協力する意向を示している。また悪質なソフトウェアのインストールなどが発見された事例は、CRRCを含めこれまでに一度もないとし、「CRRCがマルウェアを車両に搭載することは不可能だ。」と回答した。
CRRCは米大都市で受注実績を増加
近年CRRCは、ロサンゼルスやシカゴ、ボストン、フィラデルフィアと契約を締結している。また、ワシントンDCとの間でも5億ドル規模の契約締結を行うとみられている。
政府職員や国家安全保障の専門家は、中国政府の国有企業が米国の運輸システムを設計することに関して、サイバー攻撃やサイバースパイ行為、妨害行為の攻撃を受けやすくなると度々警告を行っているという。
NYタイムズによると現在両院で、国家安全保障の脅威を理由に、中国企業による米国内のプロジェクトの関与を制限する法案が提出されている。
これらの法案が議会を通過した場合、中国企業が関連する鉄道プロジェクトに、連邦資金の投入を禁止することができる。
トランプ大統領は15日大統領令に署名し、安全保障上の危機となる中国企業との取引を禁じた。その後、DOCはファーウェイ(Huawei Technologies Co Ltd)が安全保障上の脅威や利害を損なうとして、同社との取引には政府の許可を必要とする「エンティティー・リスト」(Entity List)に追加すると発表するなど、米中間の貿易に関する緊張は高まっている。