ニューヨーク市は30日、2人のトランスジェンダーの活動家、マーシャ・P・ジョンソン(Marsha P. Johnson)さん(1945-1992)と、シルビア・リベラ(Sylvia Rivera)さんのモニュメントを、グリニッジ・ヴィレッジに建設することを明らかにした。
2人は、エイズに感染した人々や、LGBTQのホームレスの若者を保護するためのシェルターを開設。1969年6月に起きたストーンウォールの反乱(Stonewall uprising)で、LGBTQの人権保護を訴え、主導的役割を果たした。
モニュメントは、2018年ニューヨークで始まった公共アートのジェンダーギャップを改善するためのプロジェクト「She Built NYC initiative」の一環として設置される。市の発表によると、トランスジェンダーが、公共の記念碑となるのは世界で初めてとなる。
NYタイムズによると、記念碑の制作予算は約75万ドル(約8,200万円)で、今後アーティストを決定し、2021年までの完成を目指す。
ジョンソンさんは、1945年生まれ。ニュージャージー州エリザベスの高校卒業後、ニューヨークへと引っ越した。ジョンソンさんは、ドラァグ・パフォーマーのポラロイドを元に作品化されたアンディ・ウォーホルの「Ladies and Gentlemen」(1975)にも登場する。
リベラさんは1951年にプエルトリコ出身の父とベネズエラ人の母の元に生まれた。11歳の頃から売春で生計を立て始めたという。NYタイムズによると、リベラさんとマーシャさんは、ミッドタウンの42ストリートで知り合い友人となった。
2人は、1970年に家族から疎外された貧しい子供達を支援する団体「Street Transvestite Action Revolutionaries,STAR」を設立し、シェルターを運営した。人々を助ける一方、2人は定住場所を持たず、自らの精神疾患にも苦しんでいたという。
1992年クリストファー・ストリート近くのハドソン川から、ジョンソンさん(当時46歳)の遺体が発見された。死因は自殺とされたが、のちに溺死と変更されたことで、仲間たちは多くの疑問を呈している。
マーシャさんは2002年、トランスジェンダーのためのシェルターで肝臓がんにより、50歳で死去した。
She Built NYC initiative
市のプロジェクト「She Built NYC initiative」は昨年11月、シャーリー・チザム(Shirley Chisholm)のモニュメントをブルックリンのプロスペクトパークに設置することを決定した。
チザム氏(1924-2005)は、アフリカ系アメリカ人女性として初の連邦議会下院議員となり、1972年には初の黒人かつ女性候補として民主党の予備選に出馬した。
その後、ジャズシンガーのビリー・ホリデー(Billie Holiday)、1800年代に路面電車の人種差別に抗議し、市内交通機関の差別廃止のきっかけとなったエリザベス・ジェニングス・グラハム(Elizabeth Jennings Graham)、ラテン系として初めて米国公衆衛生学会の代表を務め、世界中の女性や子供、マイノリティー、貧困層の公衆衛生の改善に貢献したヘレン・ロドリゲス・トリアス(Helen Rodríguez Trías)、灯台守として30年間勤務し、難破船から多くの船員の命を救ったキャサリン・ウォーカー(Katherine Walker)氏の記念碑の設置が発表された。