ニューヨーク州議会議員は10日、一定条件のもとセックスワークを非犯罪化する法案を提出した。
「The Stop Violence in the Sex Trade Acts」と呼ばれる一連の法案では、売春等に関する現行法を部分的に修正、廃止するほか、前科の取り消しなどが盛り込まれている。
法案は、LGBTQや人権、移民の権利保護などを含む、30以上の団体の連合から成るDecrimNYが支持。提出者のジュリア・サラザール(Julia Salazar)上院議員(民主)は会見で「セックスワークは州によって犯罪化されるべきではない」と述べ、現在の政策は、売買業者が「闇でセックスワークを運営する」ことを促進すると語った。
共同提案者のジェシカ・ラモス(Jessica Ramos)上院議員(民主)は、「セックスワーカーたちが暴力を通報することを促進することで、人身売買阻止に向けた一歩を踏み出した。セックスワークは職業であり、すべての人は、安全な職場で労働する固有の権利を有する」と語った。
発表によると、売春に関係するマッサージパーラーの押収によって逮捕される10人中9人は移民で、その多くは不法に滞在するアジア人だという。またニューヨークで売春に従事するLGBTQの若者の数は、その他に比べ7~8倍高いという。
法案には、LGBTQコミュニティの多様性を反映するよう、性別表現の修正も盛り込まれている。
会見に出席した元セックスワーカーのCecilia Gentiliさんは、「犯罪化は我々のコミュニティーを殺してしまう。犯罪化によって我々の記録に傷がつき、雇用へアクセスすることができない」と語った。
非犯罪化は、同意に基づく大人の売春に関するもので、サラザール議員は「子供や強制売春を含むものは、いかなるものも刑法に残す必要があると強く考えている」と語った。
Decrim NYがData for Progressと共同で5月に実施した全国調査によると、回答者の56%は非犯罪化を支持し、17%が反対と答えた。残りの27%はどちらでもない、またはわからないという答えだった。
民主党が多数の州議会だが、法案の通過は難しいと考えられるほか、宗教団体や反人身売買団体などが強く反対するとみられている。
人身売買や家庭内暴力のサバイバーを擁護する団体「サンクリュアリー・フォー・ファミリー」(Sanctuary for Families)は、売春の非犯罪化は、女性と女児を売買するシステムを合法化するだけだとして、違法な風俗業界を削減する根本的な問題解決にはならないと述べている。
ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ(Andrew Cuomo)州知事は、まだ法案を確認しておらず、コメントできないとしている。「これは論議を引き起こす問題だ。」とNYタイムズに語っている。