少女らを性的搾取の目的で人身取引したとして起訴されたジェフリー・エプスタイン(Jeffrey Epstein)被告が10日、マンハッタンの拘置所内で自殺をはかり死亡した。取引の相手には、エリザベス女王の次男、ヨーク公アンドリュー王子、ビル・リチャードソン元米国連大使、ハーバード大学ロースクールのアラン・ダーショウィッツ教授など、著名な人物の名前が告発証言で浮上している。今後の犯罪捜査の行方に関心が高まる中、エプスタイン氏の犯罪に協力していた疑いのある女性、ギレーヌ・マックスウェル(Ghislaine Maxwell)氏の名が取りざたされている。
ギレーヌ・マックスウェル氏とは?
マックスウェル氏(57)はイギリスのメディア王ロバート・マックスウェル(Robert Maxwell)の娘。ウォール・ストリートジャーナルによると、英国の大学で学び、父親がヨットからの転落事故で死亡した後、1991年に米国に移住した。なお、ヨットはロバート氏が所有していたもので「Lady Ghislaine」と名付けられていた。エプスタイン氏は、自らの所有するヴァージン諸島の島に女性を運ぶ際に使用していたヨットに、同じ名前をつけていたという。
エプスタイン氏とどのように知り合ったかは明らかではない。2人は1992年頃、短い間だが付き合っていたと報じられている。別れた後も親密な関係を保っていた。
ニューヨークマガジンの2002年の記事によると、あるジャーナリストは2人の関係について「ソウルメイトである一方で、付き合ってはいない」「ミステリアスな関係」と語っている。
記事によると、マックスウェル氏について、多くの人々が”男たらし”と形容していたという。エプスタイン氏は、マックスウェル氏のタウンハウスの近くで、若い美人の集団といるところを度々目撃されていたが、これらの中にマックスウェル氏ほどの有名な女性はいなかったという。
マックスウェル氏は2012年に、海洋保護を目的とした非営利組織「TerraMar Project」を立ち上げている。
大物とのつながり
エプスタイン氏の逮捕を境に、ビル・クリントン元大統領やトランプ大統領、ヨーク公アンドリュー王子といった著名人の横にマックスウェル氏が写る写真が、ネットやメディアに出回っている。
クリントン元大統領の長女、チェルシー・クリントン氏の結婚式に参列する姿もある。
セックス・トラフィッキング関与の疑い
エプスタイン氏の死の前日、ニューヨークの連邦裁判所は、エプステイン氏の性犯罪に関連する2015年の裁判資料を公開した。資料は、被害者のヴァージニア・ロバーツ・ジュフレ(Virginia Roberts Giuffre)さんとマックスウェル氏との間で争われた名誉毀損裁判に関するもので、マックスウェル氏の人身取引への深い関与を示す新たな疑惑が明るみに出た。
ジュフレさんは、2000年にフロリダの別荘で働いていたところ、マックスウェル氏からエプスタイン氏のマッサージの仕事をしないかと誘われたとしている。ジュフレさんは当時16か17歳だった。ジュフレさんはエプスタイン氏とマックスウェル氏から性的虐待を受けたことに加え、有力者の友人らとセックスをするよう命令された。また他の少女達をリクルートするよう指示されたと主張している。
資料では、エプスタイン氏のフロリダ宅の従業員が、過去10年で100人以上の女性や少女が家に連れてこられ、マッサージをさせられていたと推定していることや、マックスウェル氏の友人のハウスマネージャーが、エプスタイン氏の所有する島に閉じ込められていた、スウェーデンの15歳の少女に関する証言を行なっていたことがわかった。マネージャーによると、マックスウェル氏が彼女からパスポートを取り上げ、性行為を要求したと語ったという。
このほか、エプスタイン氏が別の女性に対し、1日に3度のオルガズムが必要だと話していたことや、エプスタイン氏がアマゾンで購入した性奴隷やBDSMに関する本のレシート、思春期前とみられる少女の裸の写真が含まれている。
ジュフレさんは、マックスウェル氏から性行為をするよう指示された人物として、ビル・リチャードソン元ニューメキシコ州知事や、ヨーク公アンドリュー王子、ジョージ・ミッチェル元上院議員、モデル・エージェントのジャン-リュック・ブルネル氏、ハーバード大学ロースクールのアラン・ダーショウィッツ教授、さらに「外国の首相」、「もう一人の王子」、フランスの「大手ホテルチェーン」のオーナーなどを挙げている。
これに加え、エプスタイン氏とマックスウェル氏による虐待をうけたと主張する別の女性が、エプスタイン氏のマンハッタンの自宅で、アンドリュー王子と性行為をするよう強制されたと主張したこともわかった。この時、ジュフレさんも一緒だったとしている。
トランプ氏に関しては、ジュフレさんは供述で、エプスタイン氏がよい友人だと語っていたとしつつ、2人が一緒にいることを目撃しなかったとしている。また「ドラルド・トランプ氏は一度も私を誘惑しなかった」と証言したほか、トランプ氏と他の少女との性行為を否定している。
裁判では和解が成立しているが、マックスウェル氏はこれまで、セックス・トラフィッキングの関与を一貫して否定している。
エプスタインの死後、検察は共犯者を含めて罪を追求する意向を発表した。被害者に連絡を呼びかけており、今後、さらなる疑惑が浮上する可能性が高い。
14日、エプスタイン被告による性的暴行の被害者、ジェニファー・アラオズ(Jennifer Araoz)さん(32)は、エプスタイン氏の相続人および、エプスタイン氏と共謀を働いたとしてマックスウェル氏と匿名の3人をニューヨーク郡地方裁判所に提訴した。
マックスウェル氏がロスに出没?
15日、エプスタイン氏の死後初めて、マックスウェル氏の姿が報じられた。ニューヨークポストによると、マックスウェル氏はロサンゼルスにあるハンバーガーチェーン店、イン・アンド・アウト(In-N-Out)で、ハンバーガーとフレンチフライ、シェイクをオーダー。CIAエージェントの真相を描いたノン・フィクション作品「The Book of Honor: The Secret Lives and Deaths of CIA Operatives」を読んでいた。