仏高級ブランド複合企業「モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン」(Moët Hennessy Louis Vuitton、以下LVMH)は、182年の歴史を持つ米ジュエリーブランド、ティファニー(Tiffany & Company)に買収提案をしていることが分かった。
ニューヨークタイムズによると、LVMHは28日ティファニーと買収の予備協議を行っていることを認めた。また、ティファニーも1株あたり120ドルで提案を受けたと明かした。120ドルは、25日の同社の株価に22%のプレミアムを乗せた水準。買収総額で、約144億ドル(約1兆5,600億円)となる。
事情を知る人物は、現在の提示内容について、契約成立に十分ではないだろうとタイムズに語っている。
ロイターによると、ティファニー社の株価は一時31%上昇し、130ドルとなった。1987年の上場以来、1日の出来高としては過去最高だという。
1837年創業のティファニーは、婚約指輪やシグネチャーのブルーボックスで知られる。トルーマン・カポーティの小説「ティファニーで朝食を」(Breakfast at Tiffany’s)はオードリ・ヘップバーン主演で映画化され、5番街の旗艦店は撮影場所としても有名となった。
2017年には、LVMHのブルガリより移籍したアレッサンドロ・ボリオーロ(Alessandro Bogliolo)氏が最高経営責任者(CEO)に就任。同年、コーチ(Coach)の元クリエイティブ・ディレクター、リード・クラッコフ(Reed Krakoff)氏をチーフ・アーティスティック・オフィサーとして迎えた。
新体制の元、ミレニアル世代をターゲットとしたキャンペーンを展開。レディー・ガガやダコタ・ファニングの起用や、9,000ドルのシルバーの鳥の巣などの「エブリデイ・オブジェクト」(everyday objects)の販売、同社初のカフェ「ザ・ブルー・ボックス・カフェ」(The Blue Box Café)をオープンするなど話題となった。
近年は、中国からの観光客数の減少などが影響し、売り上げが低迷していた。
LVMHは、ブルガリやショーメ、フレッド、タグホイヤーなどのジュエリー・時計ブランドを傘下に持つ。昨年高級ホテルチェーンのベルモンド(Belmond)を26億ドルで買収。2017年にはディオールを130億ドルで買収し、子会社化した。