ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ州知事は26日、安全に関する規定が不十分として、電動自転車と電動キックボードを合法化する法案を拒否した。
法案は今年6月に上院56-6、下院137-4の賛成多数で州議会を通過した。The Vergeによると、法案は、州法を修正し、州レベルでの電動自転車と電動キックボードを合法化。一方、規制方法については、各自治体による決定を可能としている。シェアサービスに関しては、開始前に自治体の許可を得なければならないほか、例外として、マンハッタンでは当面、電動キックボードのシェアサービスを許可しないこととしている。
クオモ知事はメモで、2019年度州予算における提案にはより低速のスピード制限、利用エリアに関する規制、ドラッグやアルコール摂取時の禁止、ヘルメットの着用義務、前後ライトやベルの義務化が含まれていたが、「議会の提案では、不可解にも複数の安全規定が省かれていた」と、拒否理由を説明。基本的な対策を欠いており、法案には「致命的な欠陥」があると述べた。
また、「これらモーター付きの乗り物の使用により、過去10年で頭部の負傷が3倍に増えており、被害者の3分の2はヘルメットをしていなかった。」とラトガー大学による調査結果に言及。ヘルメット着用は公衆の安全を守る上で、「常識的な要件」と述べた。
法案の支持者は、合法化によって大気汚染や渋滞の緩和につながると同時に、電動自転車に依存する多くのデリバリーワーカーの利益になると主張している。
ニューヨーク市では電気自動車の取り締まりを強化しており、使用が見つかると、没収の可能性がある上に、最大で500ドルの罰金が科される。ニューヨークタイムズによると、ニューヨーク市警察が、電気自転車と電動キックボードに関連して発行した召喚状は、2019年だけで1,114件にのぼる。
法案の共同提出者のNily Rozic州議会下院議員は声明で、知事の決断を「機会の損失」とし、法案は「ニューヨーク市の数千人のデリバリーワーカーに経済正義を提供し、安全で実行可能なオプションをもたらす」ものと述べた。
またクオモ知事はメモで「ニュージャージー州のエリザベスにおける16歳の少年の悲劇的な死を含む、昨今の多くの事故は、明らかに注意深く、責任をもって規制しなければならないことを示している」とニュージャージー州の事故に言及、「2020年の会期に引き続き議論する」と語った。
エリザベスでは今年11月、ライム社によるシェアプログラムの電動キックボードに乗っていた16歳の少年が、レッカー車と衝突して死亡する事件が発生した。同市は10月から6ヶ月間の予定で、シェアプログラムの試験導入を開始したばかりだった。5月から試験導入を開始したニュージャージー州のホーボーケンでは、安全に関する懸念から、プログラムの更新を検討する間、運用を中止することを決定した。同市では飲酒運転や歩道を走ったとして、違反切符を切られた者や逮捕者が出ているという。
クオモ知事は同日ツイッターで「電動自転車と安全のどちらかを選択する必要はない」と述べつつ、来年の会期初日に自ら法案を提示する意向を語った。