ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ州知事は1日、チップ収入を得ている特定の産業の労働者に対する時給制度を廃止し、2020年12月31日に州の定める最低時給に引き上げると発表した。
ニューヨーク州では現在、充分なチップ収入を得る労働者に対して、雇用主は最低賃金以下の時給を支払うことが許可されている。
変更により7万人の労働者が影響を受けるという。対象となるのはネイル・サロンの従業員、ヘアドレッサー、エステティシャン、洗車労働者、駐車場係員、ドアマン、レッカー車の運転手、犬のトリマー、ツアーガイド。レストランの従業員は除外された。
クオモ知事は声明で「われわれの経済を前進させる上で不可欠なサービス産業で働く従業員に公平を取り戻すため、賃金泥棒の高い危険のある産業におけるチップクレジットに終止符を打つよう労働局に指示した。」と発表。現行のチップ制度は低賃金で働く女性やマイノリティ、移民に不公平に影響しているほか、最低賃金の資格の有無をめぐる混乱により、特定の業界で賃金泥棒が横行していると、問題を指摘した。
時給基準は段階的に変更する。2020年6月30日に、最低賃金とチップ制時給の差額を半分に縮小。2020年12月31日に対象業界のチップ時給を完全に廃止する。
制度廃止には賛否の声
ニューヨーク・ネイルサロン労働者協会の主催者Glenda Sefla氏は「固定賃金を当てにできることは、われわれのようにチップに頼る労働者にとって利益だ。」と賛同を示し、「公正な労働時間、より多くの家族との時間、そして尊厳ある生活に近づく一歩である。」と述べた。
一方、ニューヨーク州洗車協会の広報は「非常に失望した」と表明。「オペレーターの多くは今後、ビジネスモデルを変更し、オートメーションを追加しなければならず、重要なエントリーレベルの仕事が取り除かれるだろう」と語った。
規制除外となったレストラン労働者協会のJoshua Chaisson副代表は声明で「本日はチップ制労働者とニューヨーク州のレストラン業界全体の大きな勝利だ」と決定を歓迎。チップクレジットの廃止を求めているのは「われわれの産業の労働者を代表していない有償のアクティビストだけだ」と述べた。
同団体は、チップクレジットの廃止がレストランのオートメーションを増加やチップモデルの廃止、またはレストランの廃業につながるとして反対をしている。
ニューヨーク州では2016年12月31日から計画的に最低賃金の引き上げを実施している。ニューヨーク市の最低時給は、企業の規模の大小を問わず2019年12月31日からすべて15ドルとなった。