25日、ニューヨークタイムズのファッションフォトグラファーとして活躍したビル・カニンガム(Bill Cunningham)氏が87歳で死去した。
6月23日脳卒中で倒れたという一報の後、回復に向かっているという情報もあったが、そのわずか2日後にニューヨークタイムズにより訃報が報じられた。
速報が出るや否や、ツイッターには、#BillCunninghamがトレンド入りし、インスタグラムにはカニンガム氏との思い出を語るメッセージや写真、イラストが溢れかえった。
「ファッションは全て路上にある」をモットーとしていたカニンガム氏が、ニューヨークの路上で写真を撮る姿や、自転車で街をかけぬけてゆく写真や、「NYの57th street(彼が良く写真を撮っていた場所)は、もう今までの通りではなくなってしまった。」というメッセージも見られた。
一眼レフカメラに、ブルーのジャケット、自転車がトレードマークのカニンガム氏は、ニューヨークより「生けるランドマーク」(Living landmark)を授与されていた。
伝説のフォトグラファー、ビル・カニンガム氏
カニンガム氏が、写真家としてのキャリアをスタートしたのは1960年代後半。独学で学んだ写真をストリート上で撮っていたところ、偶然に女優のグレタ・ガルボを撮影したことから、注目を浴びることとなった。、その後、デイリーニュース(The Daily News)
や、「シカゴ・トリビューン」(Chicago Tribune)などの新聞へ寄稿をするようになった。
1970年代からはニューヨークタイムズの公認フォトグラファーとして活躍。毎日マンハッタンの街角で撮り続けた写真の数々は、タイムズ紙日曜版「オン・ザ・ストリート」(On the Street)に掲載された。
有名人から一般人まで、移りゆくニューヨークのストリートファッションを、カニンガム氏独自の視点で切り取り、世界に「今のファッション」を発信し続けた。
青いジャケットにカーキ色のパンツ、黒のスニーカーがカニンガム氏のシグニチャースタイル
2008年にフランス政府よりレジオンドヌール勲章(Officier de l’ordre des Arts et des Lettres)を授与。
2011年に、米国で初のドキュメンタリー映画「ビルカニンガム&ニューヨーク」(BILL CUNNINGHAM NEW YORK)が公開され、その仕事ぶりやライフスタイルが紹介されるなど、一般人にも広く知られる存在となった。
名声が高まっていく一方、カニンガム氏は自身が被写体として見られることにも違和感を感じていたようで、「仕事がしにくくなってしまった。」と漏らすこともあったと伝えられている。
ドキュメンタリーの製作にもあまり乗り気ではなかったようで、その製作交渉に約8年、撮影中も本業が忙しいとの理由で、インタビューや撮影のキャンセルが重なり、通常よりも随分と多くの時間を費やしたと製作スタッフは語っている。
映画の完成披露パーティが開催された際、カニンガム氏は、上映後に現れて、ゲストの写真を撮り始めたという驚きのエピソードも残されている。完成した作品を本人が観たかどうかも定かではないという。
映画の中では、多くの名言が残されている。
[su_quote]You see if you don’t take money, they can’t tell you what to do, kid.
「もしお金をもらわなければ、彼らだって君に指示をすることはないさ」[/su_quote]
[su_quote]Money’s the cheapest thing. Liberty and freedom is the most expensive.
「お金なんて価値がないものなんだよ。束縛されないこと、自由であることが最も高価なんだ」[/su_quote]
職業人としては、会社に属することなく独立性を重んじていたカニンガム氏は、ニューヨークタイムズからの度重なる雇用の誘いも、長い間断り続けていたという。
[su_quote]I don’t work, I only know how to have fun everyday.
「僕は労働をしているんじゃない、ただ毎日どうやったら楽しいかってことはわかってるんだ」[/su_quote]
毎年2回開催されているニューヨークファッションウィークの会場では、雨や大雪の日も朝から最後のショーまで外に出て、撮影を続けるカニンガム氏が目撃されている。
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ビル・カニンガム&ニューヨーク [DVD]
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