映画の撮影中、小道具の銃から誤って実弾が発射され、スタッフ2人が死傷した事件。発生から3年がすぎ、新展開を迎えようとしている。
ニューメキシコ州の大陪審は19日、俳優のアレック・ボールドウィンを過失致死罪で起訴した。
ボールドウィンが起訴されるのは2度目。AP通信によると、特別検察官らは昨年1月に起訴したが、新たな証拠や捜査にさらなる時間が必要だとして4月になって起訴を取り下げた。
2021年10月、サンタフェで撮影が進行していた西部劇「Rust」のリハーサル中、ボールドウィンが手にした小道具の銃から誤って実弾が発射された。銃弾を受けた撮影監督のハリーナ・ハッチンス氏が死亡し、ジョエル・ソーザ監督が肩を負傷した。
ボールドウィンはこの時、映画のセットの教会の椅子に座って、ホルスターから斜めに拳銃を抜く「クロスドローイング」というスタイルで、銃をカメラに向けるシーンのリハーサルをしていたとされる。
銃は武器係の責任者ハンナ・グティエレス・リードが手配し、アシスタント・ディレクターのデイブ・ホールズが「コールドガン(実弾の入っていない銃)」だと言って、ボールドウィンに手渡した。
リードも過失致死罪で起訴されており、2月に公判が行われる。拳銃を手渡したホールは、軽微な罪で有罪を認め、実刑を免れた。
ボールドウィンは一貫して過失を否定している。事件後のテレビのインタビューで、銃の引き金は引いていないと主張。ハンマー(撃鉄)を下げ、その指を離しただけと状況を説明し、暴発した可能性を示唆していた。
ニューヨークタイムズによると、検察は、銃が不用意に発砲されやすいよう改造された可能性を示す証拠を新たにつかんだという。さらに、その後の法医学調査で、ボールドウィンの主張と対立する結論が導かれたことを受け、昨年11月に大陪審を招集した。
銃を分析した法医学の専門家、ルシエン・ハーグ氏は昨年8月「アレック・ボールドウィンは引き金を引いたことを繰り返し否定しているが、ここでの実験と所見、観察を踏まえると、証拠のレボルバーについて、フルコックの状態または引き下げられた撃鉄を開放するためには、十分に引き金を引くか、または押し込む必要があった」と報告した。ただし改造の可能性については言及しなかった。
有罪となった場合、最高で18ヶ月の禁錮刑が言い渡される可能性があるという。
豪邸を安売り
法的トラブルによる経済的負担に備えるためだろうか。数日前、一時は販売を停止したニューヨークのロングアイランド、ハンプトンズにある豪邸を、当初の設定価格を大幅に下回る1,900万ドルで売りに出した。
ニューヨークポスト紙によると、ボールドウィンはビーチ近くの広大な土地に立つ物件を、1995年に175万ドルで取得した。中古物件価格が高騰した2022年9月に2,900万ドルで売りに出したが、買い手がつかず一時的に市場から撤退していた。
15日に不動産ブローカーが公開した紹介動画には、なんと本人が出演。熱心に購入を呼びかけている。
再起訴によるキャリアへの影響も考えられる。
2022年のCNNの取材では、事件を理由に決まっていた仕事を5本キャンセルされたと明かし、「妻がいなければ、今頃どこにいるかわからない。おそらく辞めて、リタイアして、逃げていた。持っているものを全て売って、中部かどこかに家を買って、不動産販売のような何か他にやることを見つけていたかもしれない」と語っていた。
昨年の起訴取り下げの直後、マイク・ハットンが監督・脚本・出演の映画「Hollywood Heist」でミッキー・ローク、ニック・キャノンらと共演し、メジャー復帰を果たすと報じられた。11月には、トランプ役で知られたNBCの深夜のコメディ「サタデー・ナイト・ライブ」に事件後はじめて出演し、ファンの間で本格復帰を期待する声が広がっていた。