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実弾入りの銃はなぜ手渡された?アレック・ボールドウィン誤射事件

ニューメキシコ州で行われていた西部劇映画「ルスト」(Rust)の撮影現場で、俳優の誤射により、スタッフが死亡した事件で、サンタフェ郡保安官室は22日、裁判所から捜索令状を取得した。

AP通信によると、令状には、アシスタント・ディレクターのディブ・ホールズ(Dave Halls)氏から俳優のアレック・ボールドウィン氏に銃が渡されたと記載されている。この際、弾を入れるカートリッジが入っていない「コールド・ガン」と説明したとされている。

実際は、手渡された銃には実弾が入っていた。ボールドウィン氏が発砲し、2人のスタッフが銃弾を受けた。撮影監督のハリーナ・ハッチンス(Halyna Hutchins)氏(42)は、搬送先の病院で死亡が確認された。監督のジョエル・ソーザ(Joel Souza)氏(48)は、病院で手当てを受けた後、退院している。

ボールドウィン氏は発砲直後、動揺を隠しきれない様子で「なぜホット・ガン(実弾入りの銃)を渡されたのか」「今までホット・ガンを渡されたことは一度もない」と繰り返し尋ねたという。

未熟なスタッフと低予算

令状によると、ホールズ氏がボールドウィン氏に渡した銃は、 兵器係のハンナ・グティエレス・リード(Hannah Gutierrez-Reed)氏(24)が用意したものだった。

グティエレス・リード氏は、ハリウッドの有名な兵器係テル・リード(Thell Reed)氏の娘で、今回の撮影現場では、兵器係の責任者を務めていた。

デイリー・ビーストによるとリード氏は、ニコラス・ケイジが出演する映画「オールド・ウェイ(原題)」(The Old Way)で、初めて責任者を任されたという。しかしこの映画の撮影中、11歳の子役ライアン・キエラ・アームストロングさん(11)に、確認をせずに銃器を渡すなど、ミスを犯していた。

「オールド・ウェイ」に関わったスタッフは同サイトに、「銃に対して不注意で、たまに振り回すことがあった」と語っている。また安全ではないと思われる方法で、「ブランク」(弾頭のない薬莢)を充填していたこともあるという。

「ルスト」では事件が起きた21日、既にスタッフによる誤射が2度発生していた。同作品のスタッフの一部は、リード氏を「経験が浅く、未熟」だと指摘。また、アシスタント・ディレクターのホールズ氏を「銃器を確認する”最後のとりで”だったにもかかわらず、それを怠った」と非難した。

ある情報筋は、銃が「ホット(実弾もしくはブランクが充填された銃)もしくはコールドかを確認するのは、アシスタント・ディレクターの仕事」と述べ、ホールズ氏のミスを強調した。

また、低予算で製作されていたことが事故の一因だと指摘する声も上がっている。情報筋は同サイトに対し、「銃器を扱うのに基準に満たない人を雇い、宿泊場所について常に争いがあった」と説明。コスト削減が招いた結果だと語っている。

なお俳優として出演しているボールドウィン氏は、共同ブロデューサーを務めている。

スタッフの離脱など混乱も

ロサンゼルスタイムズは、一部のスタッフから労働環境や安全性に対する不満の声が上がっており、事件当日の朝、撮影スタッフ6人が現場を離脱したと報じた

製作会社のルスト・ムービー・プロダクションズは声明で「撮影現場での武器や小道具への安全性に関して、公式な苦情は寄せられていない」と説明。撮影が中断している間、手順を見直し、捜査に協力すると発表している。

映画の撮影現場で、銃の誤射による死亡事故が起きたのは、1993年以来初めてだという。この時、ブルース・リーの息子ブランドン・リー氏が亡くなった。

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