エイリアンは地底や海底、月に隠れて暮らし、人を装って地上を歩き回っているかもしれない。ハーバード大学の研究者ティム・ロマス氏は今月発表した論文で、可能性は否定できないと主張している。
ロマス氏によると、ここ数年再び関心が高まっているUAP(未確認空中現象の略、UFOの最近の呼称)をめぐる主な仮説は、地球起源説(人間のテクノロジーによるものなど)と地球外起源説(地球外の高度な文明によるものなど)の二つに大別できるが、「超地球」仮説と呼ばれるマイナーなもう一つの仮説、さらにその下位にあり、ロマス氏が論文の焦点とする「クリプトテレストリアル」仮説も検討に値する。
クリプトテレストリアル仮説は、UAPは、地球や周辺に隠れて暮らす人間外知性体の活動によるものとするもので、これには地底や月、さらに人に扮して「われわれの間を歩く」知的存在が含まれる。突飛な発想のようだが、UAPを説明するのに「もっとも合理的なシナリオ」といった評価もあるのだという。
論文では、議会公聴会で昨年、UAPの墜落現場から米政府が遺体を回収していると衝撃の証言をした空軍の元情報将校デービッド・グルーシュ氏や、科学的理解を超えたUSO(未確認水中物体)の存在を示す膨大な報告とデータがあると主張するティム・ガロデット退役海軍少将の報告書、その他のUSOの目撃事例に言及。さらに「UAPの目撃事例には、火山などの潜在的な地下のアクセスポイントに出入りするように見える航空機やその他の現象が含まれている」とした上で、一部の観測者が「人間外知性の活動の証拠」と主張するメキシコのポポカペトル火山でカメラに捉えられたオーブが浮遊する現象を例に挙げている。
また、USOとメキシコの火山ような「2つの謎の経験」を合わせて、一つの潜在的な説明として「長い間隠れていた古代文明が突然姿を現した」可能性を主張する人々も多いと指摘している。
なおロマス氏は論文について、自身の興味や考えを反映した「思索的な考察」に過ぎず、クリプトテレストリアル仮説の可能性は個人的には10%前後としている。ただし、仮説は「直ちに却下されるべきではなく、認識論的な謙虚さとオープンさを持って純粋な検討に値すると」と主張している。
UAPに関する政府や軍の活動をめぐっては長らく疑念の対象となっており、議会でもさらなる情報公開を求める声が強まっている。米国防総省は2022年に「All-Domain Anomaly Resolution Office(AARO)」を新設し、UAP目撃情報の調査や分析、公開に本腰を入れる姿勢を示している。ただし今年3月の報告書では、過去1世紀の目撃情報から地球外知性体の証拠は見つからなかたっと結論づけたほか、政府がUFOを捕獲して秘密の実験をしているといった主張は大衆文化などの影響を受けたものにすぎないと報告している。