2020年大統領選に出馬した起業家アンドリュー・ヤン(Andrew Yang)氏(45)が、来年のニューヨーク市長選に名乗りを上げる可能性があることが分かった。ニューヨークタイムズが報じた。
ヤン氏は昨年、アジア系アメリカ人として初めて民主党から大統領選への出馬を表明。オートメーションの急速な発達がもたらす産業変革に対応する新経済の一つとして、ユニバーサル・ベーシック・インカムを公約に掲げ、話題となった。
タイムズによると、ヤン氏は火曜日にコーリー・ジョンソン(Corey Johnson)市議会議長とビデオコールで会談し、立候補に関する助言を求めたという。また黒人コミュニティに大きな影響力を持つ有力指導者アル・シャープトン(Al Sharpton)氏と来週面会を予定しているほか、2009年にブルームバーグ前ニューヨーク市長のキャノペーンマネージャーを務めた著名なストラテジスト、ブラッドリー・タスク(Bradley Tusk)氏とクリス・コフィー(Chris Coffey)氏に協力を求めているという。
現在2期目のデブラシオ市長は、任期満了に伴い退任する。来年6月に行われる民主党予備選には、エリック・アダムス(Eric Adams)ブルックリン区長や、ベテラン政治家のスコット・ストリンガー(Scott Stringer)会計監査官のほか、人権弁護士のマヤ・ワイリー(Maya Wiley)氏、ウォール街で最も有名なアフリカ系アメリカ人、シティ・グループの元副会長レイ・マグワイア(Ray McGuire)氏、連邦下院選で敗北した中道派のマックス・ローズ(Max Rose)下院議員ら20人近くが名乗りを上げている。
タイムズはヤン氏に関して「明確なフロントランナーが存在しない市長選を揺るがす可能性がある」と述べつつ、ソーホーやフラッシングの再開発や、エリート校の入試制度など、市で議論となっている問題を素早く理解する必要があるとしている。また2018年のニューヨーク州知事民主党予備選で、現職のクオモ氏に敗れた女優シンシア・ニクソン氏を例に挙げ、ニューヨークで知名度や話題性は、必ずしも票に結びつかないと述べた。
SlingshotStrategiesが実施した最新の世論調査で、ヤン氏は他の民主党候補の中で最も高い支持率を獲得している。ジョン・ジェイ刑事司法大学の政治学教授スーザン・カン(Susan Kang)氏は「ヤン氏のブランドは非常に時代精神的だ」と述べ、ユニバーサル・ベーシック・インカムの公約はさらに人気が出る可能性があると語っている。
アドリュー・ヤン氏とは
ヤン氏は、台湾人を両親にもつ移民の2世。父親はIBMの研究者で、母親は大学のシステム管理者だった。
アップステートで生まれ、マンハッタンのヘルズキッチンで育ったヤン氏は、ブラウン大学で政治経済学を学んだのち、コロンビア大学のロースクールに入学した。
企業内弁護士を短期間務めたのち、起業家に転身。複数の起業を経験し、2012年に、ボルチモア、デトロイトなどの都市で、起業家の雇用創出を支援する非営利組織「Venture for America」を設立。2017年までに2,500人の雇用の創出に貢献した。
大統領選のキャンペーンでは、「MATH」(Make America Think Harder)のスローガンを掲げ、18歳から64歳のアメリカ人すべてに月1,000ドルを支給することを公約とした。国際サービス従業員労働組合のアンディ・スターン前会長が支持したほか、先月火災事故で死亡したZappos.comのトニー・シェイ最高経営責任者、ベンチャーキャピタリスト、フェイスブックやグーグルの元役職者らが出馬の初期段階で寄付を行った。
イデオロギーに偏らないキャンペーン「Not left, Not right, but forward」を展開し、無党派層の支持を獲得。6回目となった昨年12月の討論会では、寄付や世論調査の要件を満たして出場資格を得た唯一の有色人種の候補者となった。
2月に大統領選からの撤退を表明。ヤン氏は「18-34歳の民主党の有権者におけるユニバーサル・ベーシック・インカムの支持を66%に押し上げた」と成果を述べつつ、「この波は始まったばかり。これは、経済のルールを書き換えて、経済がこの国の人々のために働くようになるまで続く」と語った。
現在、上院選の決選投票が行われるジョージア州に転居し、民主党候補者のジョン・オソフ(Jon Ossoff)氏とラファエル・ウォーノック(Raphael Warnock)氏のキャンペーン活動を支援している。