アニソン x タップダンス 異色の日本人デュオがエンタメの殿堂「アポロシアター・アマチュアナイト」本戦に挑む

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ニューヨークのハーレムにある伝説の劇場、アポロシアターが開催するコンテスト企画「アマチュア・ナイト」。エラ・フィッツジェラルドをはじめ、ルーサー・ヴァンドロス、ローリン・ヒル、マシン・ガン・ケリー、H.E.R.、ジャズミン・サリヴァンなど数々の大物の才能が見出された舞台として知られ、今も世界中から明日のスターを夢見るアーティストが挑戦に訪れる。今回は6月28日に開催される本戦に、アニメソング x タップダンスで挑む日本人デュオ「ANITAP」(アニタップ)のお二人に、練習の状況や秘策、意気込みなど話を伺った。

MUKU(ムク)さん ボーカル&ボーカルトレーナー

日本でボーカリストとして活動する傍ら、レッスンのためにニューヨーク訪問を重ねる。2019年の訪問時に受けたアマチュア・ナイトのオーディションに合格した。パンデミックの影響で昨年から再開した本戦に2度ソロで出場している。2021年から長期滞在しており、現在ライブ活動と同時にボーカルトレーナーとしても活躍している。

EMIKO(エミコ)さん タップダンサー

6歳からタップダンスを習い、国際的なコンテストやショーの舞台を経験してきた。大学卒業後、2021年10月に渡米。ブロードウェイ・ダンス・センターの留学生プログラム生として18ヶ月間の研鑽を積んだ後、タップダンスアーティストとしてニューヨークで活動中。

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ANITAPを結成したきっかけを教えてください。

EMIKOさん:私にとってアマチュアナイトはプロになるための登竜門だと思っていて、力試しに挑戦したいと思っていました。情報を調べていたところ、MUKUさんがホームページで書いている体験記事を見つけて、連絡したのがきっかけです。アポをとって職場までおしかけました。

MUKUさん:すごい行動力ですよね。こうした問い合わせが結構多くて、私からはそっけない返事だったかも(笑)。会った時、EMIちゃんからストリートパフォーマンスを誘われて、今年5月に路上で演奏したのがスタートです。

アニメソングを選んだ理由は?

MUKUさん:路上演奏では色々なジャンルをやりましたが、エヴァンゲリオンを演奏したら2ブロックも先から喜んで駆け寄ってくる人がいて。タップとの組み合わせで演っている人もいないし、新しいと思いました。もともと歌は洋楽が中心で、アニメソングは初めてでしたが、手応えを感じました。英語では現地の人には敵わないけれど、こちらでは日本語のアニメソングも流行っているので、いけるのではないかと。ダメ元で写真と活動内容をアポロに送ったら、3日後にいつがいい?って返事がきました。(アマチュアナイトは一度オーディションを受かると、その後は本戦に何度も挑戦できるという)

結成して間もないデュオですが、仕上がりはいかがですか?

MUKUさん:アニソンがオーディエンスに受けるかどうか未知数ですけど、だいぶ良くなってきました。最初はそれぞれが得意なことをバラバラにやっている感じでしたが、二人がシンクロし始めて、統一感が出せるようになりました。60%くらい仕上がっていると思います。

EMIKOさん:あと40%は、それぞれのレベル上げと二人のユニゾン感の向上、クオリティを上げることに限ると思います。練習あるのみです。

6月18日ブルックリンで開催されたジャパンフェスティバルにデビュー ©MashupReporter

アマチュアナイトはオーディエンスの評価が厳しいと言われますが、特別に意識していることはありますか?

MUKUさん:ブーイングを避けるためにどうしたらよいか綿密に考えています。アポロはお客さんがすごい厳しい目で見ていて、隙があればすぐにブーイングが飛ぶ。持ち時間は3分ですが、オリジナルの楽曲の構成を変えて2分30秒に短縮して、振り付けも考え抜いた結果、今に至ります。普通のショーとは違って、お客さんが審査員で、すべてが味方じゃないという反面、本番はパフォーマンスのクオリティうんぬんよりも、味方につけることができたら勝ちなんです。そのために自分たちに精一杯じゃなくて、お客さんに気持ちを向ける余裕ができるまで練習するつもりです。

当日バンドとのリハーサルはどれくらいの時間があるのですか?

MUKUさん:楽譜と音源を事前に渡しておいて、当日合わせられるのが15分です。みんな気さくで良い人ばかりです。ただ、J-POPの楽曲のように細かく決められたことをやってくれないと思います。音源とは違った感じになるとあらかじめ覚悟しています。

本番を控えて心配したり、不安になったりすることはありますか。

EMIKOさん:私はあまりありません。もちろんアポロシアターに限らず、コンテストやショーケースに出場する時は不安になるんです。審査が厳しくてうまくいかない可能性の方が大きいかもしれないとわかっているんですが、楽しみの方が勝っています。練習をたくさんこなすことと、お客さんの反応は運でもあるからと自分に言い聞かせています。大丈夫って思い込むことも大事だから。

MUKUさん:ブーイングが起きなければいいなって思っています。アポロって前座のショーで、ブーイングの練習をさせているんですよね。それもエンターテイメントの一つにしていて、自然発生のヤジではないんですが、そうとわかっていてもダメージがあるんです。明るくて自信のあるEMIちゃんとは良いコンビだと思います。

本番にかける意気込みをお聞かせください。

EMIKOさん:もちろん勝ちを取りにいきます。ただ勝ちに行くだけでなくて、アポロの空気を吸って楽しみたいと思っています。

MUKUさん:これまでの3回(1回目は2回戦に進出、2回目は1回戦で終了)では自分に精一杯で、軸が自分に向いていたと思うんです。今回は、練習期間の間に歌詞や振り付けを体に叩き込んで、本番は外に意識を飛ばせるようにしたいと思っています。お客さんと一体感が生まれる瞬間って、とてつもなく気持ちが良いんです。ANITAPがどう成長していくのかが楽しみで、アポロで試してみたい。アニソンが果たして受け入れられるのか、知りたいと思っています。

お話をいただきありがとうございました。28日の本戦を勝ち進むことを期待しています!

Osamu F. MahupReporter.com
福崎 治 / Mahup Reporter 運営・編集責任者。ご意見、ご要望はメールにてinfo@mashupreporter.com