米俳優が映画の撮影現場で、実弾入りの銃を誤射し、撮影監督が死亡した事件に関して、銃を用意したスタッフの代理人は、悪意のある人物が、実弾を混入させた可能性があると主張した。
事件は先月21日、ニューメキシコ州サンタフェ郡で、西部劇映画「Rust」の撮影リハーサル中に起きた。俳優アレック・ボールドウィン氏の撃った銃弾は、撮影監督のハリーナ・ハッチンス氏の胸部と監督のジョエル・ソーザ氏の肩にあたった。ハッチンス氏は搬送先の病院で死亡が確認された。
銃を用意したのは、武器係の責任者ハンナ・グティエレス・リード(Hannah Gutierrez-Reed)氏(24)で、銃を手渡したのはアシスタント・ディレクターのデイブ・ホールズ(Dave Halls)氏だった。
代理人ジェイソン・ボウルズ弁護士は3日、情報番組「グッドモーニングアメリカ」に出演。リード氏は、銃弾の管理と安全確認を十分に行ったと擁護した上で、誰かが意図的に撮影を妨害しようとした可能性があると語った。
ボウルズ氏によると、リード氏は撮影前「ダミー・ラウンド」とラベルのついた箱から6発の弾を取り出し、シリンダーに装入。アシスタント・ディレクターのホールズ氏に手渡す際に、「シリンダーを回転させ、全ての銃弾を見せた」という。ホールズ氏はそれを確認した上で、撮影現場の教会に持ち込み、ボールドウィン氏に手渡した。
なお、ホールズ氏は銃を渡す際、実弾が込められておらず、安全であることを意味する「コールドガン」だとボールドウィン氏に伝えていた。
ボウルズ氏は、リード氏以外の誰かが実弾をその箱に入れたと説明。「実弾と空砲の弾は非常に似ており、それをするのは、混乱を生じるよう悪意を持っている時だけだ」と述べ、意図的に混入されたと考えを示した。
司会者から主張の裏付けを聞かれると、箱に銃弾が混入した理由については「ほとんど説明がつかない」と述べつつ、「誰かが武器を持ち込み、セットで事故が起きるのを望んだ。ダミーと実弾を混ぜる理由はそれ以外にない」と強調した。
700万ドル(8億円)の低予算映画と言われている「Rust」では、一部のスタッフから労働環境や安全性に対する不満の声が上がっていた。事件当日の朝、撮影スタッフ6人が現場を離脱していたと報じられている。
また若い武器係であるリード氏の知識や経験不足を指摘する現場スタッフの声も上がっている。
なお撮影現場からは、捜査当局によって大量の銃弾が押収されている。27日の会見で、サンタフェ郡保安官室のアダン・メンドーサ氏は、押収品目は600点のうち、500点が弾薬で、3丁が拳銃だと明かした。
TMZは、スタッフらが撮影前、実弾入りの銃で射撃訓練を行っていたほか、撮影現場には、実弾と「ブランク」(弾頭が外された銃弾)が同じ場所に保管されていたと報じている。