バイデン政権は16日、ウクライナ政府に対し、追加で8億ドル(約950億円)の安全保障支援を提供すると発表した。バイデン政権の発足以来、ウクライナに対する支援は、先週発表された10億ドルを含めると、合計20億ドル(約2,400億円)にのぼる。
この日、ウクライナのゼレンスキー大統領は、米連邦議員らに向けてオンラインで演説を行った。真珠湾攻撃や、同時多発テロ事件の経験を忘れないで欲しいと述べ、ウクライナでの飛行禁止区域の設定や、さらなる武器の提供など追加の支援を求めた。
バイデン政権が発表した一連の支援には、10,000の対空兵器や、800の携帯防空ミサイルシステム「スティンガー」、銃約7,000丁のほか、100の戦術無人航空機システム(小型ドローン)が含まれる。
カミカゼドローンを提供
NBCニュースは15日、政府が「Switchblade」(スイッチブレード)と呼ばれる、自爆型の小型ドローンを、ウクライナに供与すると報じていた。
スイッチブレードは、首都ワシントン郊外にあるエアロバイロメント(AeroVironment)社製で、「Switchblade 300」「Switchblade 600」の2種類がある。カメラやGPS、誘導システム、爆弾を搭載し、数キロ離れた標的に、自ら突っ込んで爆発することから、「カミカゼ・ドローン」と呼ばれることもある。民間人を発見した場合など、直前で攻撃を中止する能力を備える。
小型の300は、人をピンポイントに攻撃するよう設計されている。長さ約60センチ、重さ約2.5キログラムで、15分飛行することができる。大型の600は、戦車や装甲車両を破壊する目的で作られ、飛行時間は40分、40キロ以上先の目標物に到達することができる。重さは約23キログラム。
飛行速度は、現在ロシア軍が使用しているトルコ製無人戦闘機「バイラクタルTB2」より速いという。
コストは、対戦車ミサイル「ヘルファイア」に比べて低い。小型の300は、6,000ドル(約70万円)程度とも報じられている。
▼NBCニュースは昨年12月、Switchblade 300のデモンストレーションを公開した。バックパックに入れて持ち歩くことができるほか、セットアップも容易で、短時間で発射まで完了することができる。
Switchbladeはこれまで、アフガニスタンなどの限られた状況で使用されたことがあるが、政府からは公式に発表されたことはない。
なお、どちらのタイプを供与するか、明らかにされておらず、ウクライナ政府との取り決めや、メーカー側の製造計画、ウクライナ兵に対する訓練方法など不明な点が多い。
ニューヨークポスト紙は、16日に行われたホワイトハウスの記者会見で、記者からはウクライナに供与する武器の線引きや、定義に対する質問が寄せられたが、サキ報道官は答えに窮する場面があったと伝えている。