ロシアがウクライナ侵攻を始めてからまもなく1年目を迎えようという20日、バイデン大統領は首都キーウを電撃訪問し、ゼレンスキー大統領と再会を果たした。
米国大統領が戦時下にある国を訪問するのははじめてではないが、米軍のプレゼンスのない中での訪問は極めて異例。
SNSにシェアされた動画では、キエフ市街の聖ミカエル修道院をともに訪れた両首脳が、ウクライナの兵士の肖像画が祀られた「追憶の壁」を歩く背後で、警報サイレンが鳴り響く様子が撮影されている。警報はベラルーシからロシアのミグ戦闘機が離陸したことに起因するものだったと報じられている。
バイデン氏は訪問に合わせて発表した声明で、「ウクライナの民主主義と主権、領土保全に対する我々の揺るぎない、たゆまぬ決意を再確認する」ためだと説明。新たな「砲弾、対戦車システム、航空監視レーダーを含む重要な装備の提供」と追加の制裁措置を講じるつもりだとした。追加支援は500万ドルになると報じられている。
極秘裏に計画
現職大統領の紛争地域への訪問は、数ヶ月間かけて外部に漏れないように周到に計画された。
ホワイトハウスの当局者らは20日朝に実施した電話会見で、数ヶ月間にわたって関係者らが入念に計画を進めたと説明。計画には、主席補佐官オフィスや国家安全保障会議(NSC)、ホワイトハウスの軍事室、国防総省、シークレットサービス、情報機関の人物らが加わったとした。バイデン氏は各段階で説明を受けており、最終的に金曜日に決行の判断を下したと明かした。
さらに出発の数時間前、ロシア側に「混同を避けるために」通知したと述べた。
ポーランドから電車で10時間
ニューヨークタイムズによると、バイデン大統領は日曜日の夜明け前に予告なく首都ワシントンを抜け出した。エアフォースワンが離陸したのは午前4時15分で、ジェイク・サリバン大統領補佐官と副官のジェン・オマリー・ディロン、大統領執務室の運営責任者アニー・トマシーニ氏に加え、数人の記者が同行した。記者らは事前に秘密保持を約束させられ、電話も取り上げられたという。大統領がキーウにいる間は、ホワイトハウスが用意したレポートを伝える以外、移動方法などについての報道は禁止された。
ある当局者は、同紙の取材に、大統領一行は、大西洋を横断してポーランドに到着した後、列車で約10時間をかけて国境を越え、キーウ入りを果たしたと語った。火曜日にはワルシャワでドゥダ大統領との会見を予定しているが、帰りも同様の方法になるという。
世論調査でウクライナ支援に対する国内世論の弱まりが示される中、駐留米軍がおらず制空権のない中での訪問は、米国のコミットメントを国内外に改めてアピール形となった。
一方、ウクライナにとっては、戦闘機や長距離ミサイルといった、これまで米政府が提供に否定的な兵器供与に期待をもたらした。
アンドリー・イェルマーク大統領府長官はテレグラムで「私を信じて欲しい。ジョー・バイデン氏の訪問は戦略的だ」と投稿。「多くの問題が解決されつつあり、行き詰っていた問題も加速されるだろう。われわれの共通のゴールは、ウクライナがロシアに勝利し、ウクライナ兵と西側兵器が勝利することだ」と述べた。