議会予算局(CBO)は8日、連邦最低賃金を2025年までに時給15ドルに引き上げた場合の影響について、レポートを公表した。
現在の連邦最低賃金は時給7.25ドルで、2009年以来変化していない。
CBOは、連邦最低賃金を15ドルに引き上げた場合、賃金水準がこれを下回る1,700万人の労働者の賃金が上昇するとし、さらに賃金水準が新たな最低賃金をわずかに上回る1,000万人の労働者の賃金も上昇するだろうとしている。
一方、引き上げは雇用の減少につながり、中央値で130万人、就業者数の0.8%が失業するだろうとしている。
また、人件費の引き上げによる事業所得の減少は、最終的に価格に転嫁されるほか、低賃金労働者の減少が機械や建物、その他の資本財の生産性の減少をもたらすと予測。インフレ調整後の世帯の実質所得を0.1%押し下げるだろうと予測している。
CBOはこのほか、12ドルと10ドルに引き上げた場合の試算も公表した。
下院では今年1月、教育労働委員会のボビー・スコット委員長(民主党 バージニア州)が中心となり、連邦最低賃金を15ドルに段階的に引き上げる法案を提出した。
提出に当たって、スコット委員長は声明で、15ドルの引き上げにより、全国4,000万人の労働者の賃金と生活水準が向上すると発表していた。
また上院では、バーニー・サンダース議員を中心に、31名の共同提案者によって同じ法案が提出された。
法案は共和党が多数の上院での採決は厳しいとみられているほか、トランプ大統領が拒否する可能性もあるものの、リベラル派にとっては、2020年選挙を見据えたメッセージとして、発信していきたい狙いがある。
最低賃金については、連邦政府が指定するべきでないとの声もある。
ラリー・クドロー国家経済会議(NEC)委員長は昨年、引き上げを「ひどい考え」と述べ、生活費や産業の状況が州によって異なることから、政府が管轄するべきではないと主張している。
これまでカリフォルニア州、マサチューセッツ州、ニューヨーク州、ニュージャージー州、ワシントンD.Cなどで、時給15ドルへの引き上げが法制化されている。