ここ数年、新たに開校するインターナショナルスクールが増えているという。「外国駐在員の御子息が通う学校」、「有名人の御曹司が多い」、筆者にはそんな特別なイメージがつきまとうインター校だが、最近のスクールの実情はどうだろうか。今回は、2016年に横浜に開校したCGKインターナショナルスクールの甲斐 実(かい みのる)理事長に学校の特色や保護者たちが期待していること、今後の展望について伺った。
近年、インターナショナルスクールの開校ラッシュという言葉も聞かれます。CGKインターナショナルスクールも新しい学校の一つです。2016年にプリスクールの開校にいたった経緯や理由を教えていただけますか?
英語教室を事業として行っていましたが、大人を対象にしたものでは、英語力の上達という点と、グローバル志向へのマインドセット変革という点で、非常に苦労していました。それらを解決する手段として、幼児からのプリスクール開校にいたったのはとても自然なことでした。
開校から7年が経ち、今年は初等部が開校されました。振り返ってみていかがですか。順調でしたか?
生徒数は順調に増えていますが、まだまだ試行錯誤の繰り返しです。プリスクール、アフタースクール、そして初等部を順次開校しているので、あっという間の7年間です。カリキュラム内容も毎年振り返り、改善し、昨年はIB(国際バカロレア)を取り入れるという大きな変化がありましたし、それに伴い、先生のクラス配置人数をより充実させました。
より世界基準の教育内容を提供できるようになったのですが、先生たち、そして運営スタッフもこの大きな変化に対応するのは大変なことだと思います。そんな大きな変化も協力しながら乗り越えているので、本当に良いチームだと自信を持って言えます。
生徒が増えれば先生も増えます。採用基準も年々上がり、スキルだけでなく、人間性を非常に重視するようになりました。優秀な先生たちを採用できることで子どもたちと毎日接する先生たち、そしてスクールを運営するスタッフの質は高いものを維持できています。7年間の積み重ねがこのチーム作りにもいい影響を与えていると思います。
特にご苦労された点はありますでしょうか?
細かい苦労はもちろんありますが、大きな点は、理想のチーム作りです。開校当初は、先生の入れ替わりも多く、経営側と先生たちとの間で溝があったと感じています。ですが、CGKの方針を丁寧に説明し、一人ひとりの職員を大事にすることで、定着率は94.4%まで改善しました。先程もお話しましたが、スキルだけでなく、人間性が素晴らしい職員の採用に尽力してきましたので、そういう職員が揃っていることが当校の強みです。
初等部の開校は当初から計画されていたことでしょうか?
高等部までの一貫校開校は初めから計画されていたことでした。ただ大きなきっかけは、アフタースクールです。当校のアフタースクールは、プリスクール卒業生のための開校が大きな理由なので、プリスクール卒業生レベルの英語力を持った生徒のみ受け入れをしています。外国人の先生と英語で会話できる子たちが入学し、英語を使ってレッスンを行うことで英語も上達するのはもちろんのこと、CGKで掲げる思考力・探究心・表現力に働きかけるプロジェクト活動をメインに活動しています。このプロジェクト活動では、子どもたちの自主性を尊重し、子どもたちの興味、関心をもとにレッスンを進めていくことを目指しています。その中で、「毎日、子どもたちが通ってきてくれていたら、もっと深く学べるのに」「子どもたちの興味を深堀りするには、英語力のサポートもきちんとしてあげたい」などの課題が出てきました。そこで、もともと計画していたものではありますが、プランを早めて初等部を開校し、より多くの子どもたちがCGKが目指す教育を存分に受ける環境を整えたのがきっかけです。
また、インターナショナルスクールというと、その後、日本の学校に戻れなくなったり、大学の受験資格が得られないのではないかという不安をお持ちの方もいらっしゃいますが、IBやその他の認定制度を活用することによって、自信を持ってお預かりできるようになったのも、時期を早めた大きな要因です。
開校時3人だった生徒が、現在160人を超えました。来年度には250人程度まで増える見込みだと伺いました。保護者の方々の期待やニーズに応えてきた結果かと思います。
英語はもちろん、様々な経験をさせて欲しいという保護者の方の期待に応えることができているのかなと思います。プリスクール、初等部ともに頻繁にフィールドトリップ(校外学習・遠足)を計画し、「本物の体験」ができるようにしています。この体験が、子どもたちの学びを深くし、次の興味につなげることができていると思います。写真や動画で見るだけでなく、子どもたちの目で実際に見て、触って、感じたことこそ、本物の学びだと思います。
また、安心してお子様を預けたいと思える環境づくりも意識しています。共働きの家庭も多い中、送迎バス完備、預かり時間の長いプリスクール、初等部の放課後活動の充実、短い長期休暇(プリスクール)や長期期間中のシーズナルスクール開講(小学生向け)もその一つです。コミュニティ活動の充実にも力を入れ、保護者同士や先生との交流を深められる機会や、週末のイベント運営をすることで家族で参加できるアクティビティを提供することもできています。スクール、ご家庭、地域の関わりすべてが子どもたちの学びにつながるので、教室以外での学びの提供は、今後も続けていきたいと思います。
2025年に中等部、2028年に高等部の開校を予定されています。一貫校となることでどういった価値や進路が提供できるようになるのでしょうか?
プリスクール、そして初等部よりも子どもたちの選択肢が広がると思っています。プリスクールを開校し、子どもたちへグローバル教育を提供することができました。
高い英語力もつき、日本だけでなく世界へ視野を広げたり、一人一人の違いを受け入れてきましたが、日本の小学校での英語教育との差によって英語力が下がるだけでなく、教育改革がまだ不十分な日本の教育を受けることの弊害も正直感じていました。しかし、初等部が開校したことで、プリスクールから小学生までCGKの教育を継続することができています。そして、今後、中等部、高等部と開校していくことで、IBを基盤にCGKが大事にするグローバルスキルに働きかけた教育を一貫してできることで、生徒たちの選択肢は、日本、海外など国に関係なく、子どもたちが生きていく社会をより良くするべく、一人一人の価値観に沿った選択ができるようになると信じています。
IBはアカデミックスキルが高い生徒のためだけのプログラムではありません。すべての生徒に当てはまり、生徒の良さを引き出していける世界基準のカリキュラムとCGKが大事にするグローバルスキルを融合させて、一人一人の生徒が思いやりを持ってこれからの社会に貢献していく姿が今から楽しみです。
グローバル人材の育成という言葉が叫ばれて久しいかと思います。一般の学校でも以前に比べて国際カリキュラムを取り入れる学校が増えています。そうした中、インターナショナルスクールのあり方や果たせる役割はどのように変わっていくと思いますか?
実際に教育が行われている現場の柔軟性、対応力、そして真のグローバルな環境を提供できるところは、CGKのようなスクールの得意な部分だと思います。学習指導要領が改定され、IB教育の目指すところとの親和性はかなりあるのですが、実際の教室内のアプローチは数十年前に私たちが子どものころに受けたものと変わらない部分は多いのではないでしょうか。一人の先生に対する生徒の割合もそうですし、一方的な講義の形から子どもたち主体の参加型レッスンへの移行も簡単なものではありません。指導する先生のトレーニングや、モチベーション維持、保護者の理解と協力ということも関係してくると思います。凄まじい速さで変わっていく社会に合わせて教育が変わっていくには、当校のようなインターナショナルスクールがモデルとなることで、一般の学校へも良い影響を与えることができるのではないでしょうか。
CGKインターナショナルスクール:現在2歳〜6歳のプリスクール、1年生〜4年生が在籍する初等部で、高い質の探究型学習カリキュラムを提供する。2022年に国際バカロレアIB PYP候補校の認定を受けた。2028年までに中等部と高等部の開校を予定するなど、急成長中のインターナショナルスクール。