CNNは4日、人気キャスターのクリス・クオモ(Chris Cuomo)氏の即時解雇を発表した。クリス氏は30日、兄のアンドリュー・クオモ前ニューヨーク知事のセクハラ問題の対応に、深く関与したとして、無期限の停職処分を受けていた。
CNNは声明で「法律事務所が審査を行う過程で、さらなる情報が明らかになった」と説明。解雇後も、「必要に応じて」調査を継続するとしている。
ニューヨークタイムズによると、CNNは、新たに判明した情報について、公表を差し控えるとしている。プレジデントのジェフ・ザッカー氏は、スタッフに宛てた通知で、「複雑な要素が多分に含まれ、決定は容易ではなかった」と述べたという。
クリス氏も声明で、「このような形でCNNでの時間を終わらせたくなかった」、兄を支援した理由についても既に明らかにしているとし、落胆したと語った。激しい視聴率競争の中、CNNでトップの番組となったことは、チームのおかげだと感謝を述べ、同僚との別れを惜しんだ。
資料公表で、CNNもかばいきれず
この問題が最初に浮上したのは今年5月。ワシントンポスト紙は、クリス氏が、クオモ氏の電話会議に参加し、セクハラ疑惑への対応をアドバイスしていたと報じた。同紙は、一般的なジャーナリズムの規範に反していると指摘。
ニューヨークタイムズからも「政治家と、ジャーナリストの間の伝統的なバリアの侵害」だと非難の声が上がった。
CNNのザッカー氏はこの時、クリス氏の立場は「非常に特殊な状況にある」として、擁護する姿勢を見せていた。
なおザッカー氏は、2013年に社長に就任した際、当時ABCニュースに在籍していたクリス氏と契約し、CNNへの看板キャスターへと押し上げた。
先月29日に、ニューヨーク州のレティシア・ジェームズ司法長官が公開した、セクハラ調査に関する新たな資料から、クリス氏の深い関与が判明。
資料からは、クリス氏が、クオモ氏の反論声明について助言していたほか、ジャーナリストとしてのネットワークを通じて、他のメディアの報道や、告発女性について、探りを入れようとしていたことが明らかになった。
これに対し、CNNは、「深刻な問題を提起している」と述べ、「法律事務所が評価を行う間、クリス氏を無期限の停職処分にする」と発表した。
倫理違反を指摘する声
2020年のパンデミック中、兄のクオモ氏は、クリス氏の番組「クオモ・プライムタイム」に度々出演。番組は、高視聴率を記録した。
また新型コロナウイルスに感染したクリス氏も、ロングアイランドにある自宅の地下室から、クオモ氏の記者会見に生出演し、自身の闘病体験を語りつつ、兄弟の絆をアピールしていた。
5月のワシントンポスト紙の報道後、クリス氏は、自身の番組で「私の家族は、自分にとってのすべて。家族に対して強烈な忠誠心がある」と話し、「家族が一番で、仕事は二番目」と姿勢を強調。
同僚を「困難な状況においた」として謝罪しつつ、ジャーナリストであると同時に、政治家を家族に持つことには「特有の困難」を伴うと話した。
なおポスト紙は3月にも、クリス氏を含む家族や親戚に、州が運営する新型コロナウイルスの検査を優先的に受ける機会が提供されていたと報じており、倫理的な問題を指摘する声が上がっていた。