イギリスの情報機関MI6の元エージェントで「スティール文書」の作成者として知られる、クリストファー・スティール氏が、ロシアのプーチン大統領(69)について「深刻な病に侵されている」とインタビューで語った。
スティール氏はロシア担当デスクとしてMI6を率い、かつて数年にわたってスパイとしてモスクワに潜入したこともある。そのスティール氏が15日、英メディアSky Newsのインタビューでプーチン氏の健康状態について、「確かに、私たちがロシアや他の地域の情報筋から聞いた限りでは、プーチン氏は実際かなり深刻な病に侵されている」と話した。
スティール氏はさらに、プーチン氏の健康状態がウクライナに関する判断を左右する「要素」となっていると指摘。「どんな病気か具体的には分からない――治療不可能なものか、末期的な状態かどうかは分からない。だが確実に、私はそれが(ウクライナ侵攻に)関係していると思う」と述べた。
プーチン重病説
プーチン氏が重病だとする話しは、ここ数カ月メディアで繰り返し取り上げられている。今月14日にはウクライナ国防情報局トップのキリロ・ブダノフ少将がSky Newsに対し、プーチン氏は「心身ともに非常に悪い状態で重い病気にかかっている」とした上、プーチン氏が病気だという情報を受けロシア国内でクーデターの計画も出ている、と語っていた。
またNews Lines Magazineは今月12日、ロシアのオリガルヒ(新興財閥)がプーチン氏について「血液のがんで深刻な病状だ」と話す音声テープを入手したと報じた。ただ、オリガルヒの身元は特定できているものの、音声の裏付けがとれていないという。
プーチン氏には様々な病気の噂が立っているが、その事実関係を確かめるのは不可能とされる。調査報道を専門に扱うロシアの独立系ニュースメディアProektは先月、甲状腺がんの専門医が何十回もプーチン氏のもとを訪れていたと伝えた。
今月初めには、元KGBエージェントのボリス・カルピチコフ氏が英紙The Sunのインタビューで、情報元を明かさないという条件で、プーチン氏が認知症やパーキンソン病を含む複数の病に苦しんでいるとし、「深刻な懸念事項とされている」と明かした。先日、ニューヨークポスト紙が、プーチン氏が手術に入る間、影武者が政権を運営するといった内容を伝え、話題になった。
クリストファー・スティールとは
スティール氏は1990年代、表向きは外交官としてモスクワに潜入し3年にわたってスパイ活動を行った。2006年から2009年までMI6でロシア担当デスクのチーフを務めた。
スティール氏は、2016年の大統領選挙で問題となった機密文書、いわゆる“スティール文書”の作成者。文書にはロシアとトランプ氏のつながりや、トランプ陣営とロシア側との共謀を示唆する内容が記されている。トランプ氏が政界入り前、ロシアのホテルで売春婦らを呼び「ゴールデンシャワー(おしっこ)ショー」を見物したという内容は特に注目を集め、スティール氏はこの証拠を示す映像、いわゆる「おしっこテープ(pee tape)」が存在すると主張していた。CNNによると、テープが存在する証拠はなく、文書の信頼性も疑問が残るといわれている。
文書は、調査会社フュージョンGPSの依頼で作成されたもので、同社はヒラリー・クリントン氏と民主党全国委員会から敵陣調査の依頼を受けていた。後にFBIによって、トランプ陣営のカーター・ペイジ元外交顧問に対する外国諜報活動偵察法(FISA)に基づく捜査令状申請に使用された。このことは、ロシア捜査を政治偏見に基づく「魔女狩り」として、捜査自体の正当性を否定するトランプ氏の根拠ともなった。