築90年のアールデコ様式の高層ビル、クライスラー・ビルディング(The Chrysler Building)が売りに出されていることが分かった。ウォールストリートジャーナルが報じた。
クライスラービルは、アラブ首長国連邦の政府系ファンド、アブダビ投資庁(Abu Dhabi Investment Council)を90%が保有し、残りを不動産会社ティッシュマン・スパイヤー(Tishman Speyer)が保有している。
現在CBREグループが売却の仲介を行っており、担当のDarcy Stacom氏は「世界中から問い合わせが入っており、大変ワクワクしている。」とロイター通信に語った。
Commercial Observerによると、ティッシュマン・スパイヤーは1997年にクライスラー・ビルディングを購入し、改装に1億ドルを費やした。
関係者によると、同社は、リーマン・ショックが始まる直前の2008年、90%の所有権を市場最高値の8億ドルで、アブダビ投資庁に売却したと言われる。
販売価格は公表されていないが、コンパス(Compass)の商業物件販売の副会長、Adelaide Polsinelli氏は、売却金額が5億ドル(約540億円)から8億ドル(約870億円)になると予測している。
価格幅は広いが、購入時の金額を取り戻すのは難しいとみられている。
一方、2016年にウォルドルフ・アストリア(The Waldorf-Astoria)が中国の安邦保険集団(Anbang Insurance)に20億ドルで売却されたことから、ニューヨークを象徴する高層ビルには、予想以上の高値がつくとの見方もある。
クライスラービルとは
77階立ての高層ビルは、建築家のウィリアム・ヴァン・アレン(William Van Alen)氏が設計し、1930年に完成した。
高さを競っていた「40ウォールストリートビル」(40 Wall Street)を、尖塔の高さ分を抜いて、世界一高いビルとなった。
1931年にエンパイア・ステート・ビルディング(Empire State Building)が完成したため、1位の座を譲り渡すこととなった。現在はニューヨークで6番目に高いビルとなる。
ビルは、1953年まで自動車メーカーのクライスラー本社として使用されており、建物の名前は、当時のオーナー兼役員を務めるウォルター・クライスラー氏に由来する。
『スパイダーマン』や『インデペンデンス・デイ』など映画のロケ地としても知られる。
現在は、クリエイティヴ・アーティスツ・エージェンシーや、モーゼス&シンガー法律事務所、シェアオフィスのSpacesなどが入居している。テナント料は、1平方フィート当たり50ドルから60ドルだという。