トランプ前大統領の「口止め料」にからむ裁判が続くなか、Xでは、クリントン元大統領も口止め料を払っていたと主張する投稿が出回っている。
1998年にビル・クリントンは、ポーラ・ジョーンズを黙って去らせるために85万ドルを支払った。これは口止め料というものだ。当時は違法じゃなくて、今は違法だ。トランプを解放せよ」、Xより
クリントン氏の支払い→「口止め料」ではない
結論からすると、クリントン氏の支払いは、トランプ氏と異なり、口封じのためではなかった。
クリトン氏のセクハラ疑惑が明るみに出たのは大統領2年目の1994年。アーカンソー州の下級職員だったポーラ・ジョーンズ氏は、1991年に当時同州知事だったクリントン氏のボディガードからホテルの一室に案内された後、クリントン氏がズボンを下ろし、性的な行為を要求したと主張。70万ドルの支払いと謝罪を求める訴訟を提起した。
クリントン氏は疑惑を否定し、裁判所に対して大統領の任期終了まで審理を延期するよう求めた。延期をめるぐ争いは連邦最高裁まで持ち込まれ、最終的に裁判を続行する判決が下された。
一審の判事は「事件には真の争点となるべきものがない」として、ジョーンズ氏の訴えを棄却。ジョーンズ氏側は控訴したが、提訴から約4年半後の1998年11月、クリントン氏が85万ドルを支払うことで和解に達し、訴えを取り下げた。両者が交わした4ページにおよぶ合意文書は、クリントン氏は不正行為を認めず、謝罪もしないという内容だった。
この裁判で、クリントン氏は被告として証言した初の大統領という不名誉を被ることになった。また、裁判手続きの過程で、モニカ・ルインスキー氏との性的関係を否定したことは、特別検察官のさらなる捜査で偽証であると結論づけられ、下院による弾劾訴追へとつながっていった。
なお、口止め料を支払うことは必ずしも違法ではなく、トランプ氏は、口止め料にからむ会計処理34件が業務記録改ざんの罪にあたるとして起訴されている。
起訴状によると、肉体関係を持ったとされるポルノ女優に対する口止め料は、2016年選挙戦終盤に当時弁護士だったマイケル・コーエン氏が支払い、トランプ氏は分割で払い戻した。この際、小切手や内部記録の名目を「存在しないリテーナー契約に従って提供された法律サービスの支払い」と偽装したとされる。ニューヨーク州では業務記録の改ざんは通常は軽罪として扱われるが、検察は「欺く意図があり、もう一つの犯罪を隠蔽する意図」がある場合は重罪にあたり、記録の改ざんは、選挙に影響を及ぼすためであったと主張している。
[ソース]
Paula Jones Civil Suit, New York Times,https://archive.nytimes.com/www.nytimes.com/library/politics/clintonjones-chronology.html
Clinton Settles Paula Jones Lawsuit for $850,000, Washington Post(1998年11月14日),https://www.washingtonpost.com/wp-srv/politics/special/clinton/stories/jones111498.htm