CNNは30日、クオモ前ニューヨーク州知事の弟で、プライムタイムショーの人気アンカー、クリス・クオモ氏(51)を無期限の停職処分にすると発表した。
理由について、ニューヨーク州司法長官が新たに公表した資料から、クリス氏が、クオモ前知事のセクハラ疑惑への対応に大きく関与したことが判明したためとしている。
レディシア・ジェームズ司法長官は29日、クオモ知事の辞任のきっかけとなったセクハラ調査に関し、捜査官の聴取記録を含む、新たな資料を公開した。
The Hillによると、同局は声明で、新たな資料は「深刻な問題を提起している」と説明。前回、クリス氏の関与が明るみに出た際は、規則違反と認識しつつも、家族を仕事に優先するというクリス氏の考えを認めたとした上で、「これらの資料は、これまで知らなかった、兄の取り組みに対すりより高いレベルの関与を示している。結果、評価を行う間、クリス氏を無期限の停職にする」と述べた。
資料には、クリス氏とクオモ前知事のスタッフ間のメッセージのやりとりなどが含まれた。
クオモ知事の秘書官だったメリッサ・デローサ氏は3月、クリス氏に送ったテキストで、他の女性が新たに告発する可能性について、情報筋を確認してほしいと要請。クリス氏はこれに「今やってる」と返答した。
別のメッセージでは、クリス氏はデローサ氏に「結婚式の女の子なら情報がある」と伝えていた。メッセージの内容は、友人の結婚式で、初対面のクオモ氏から背中を触られたり、キスを迫られたりするなど、望まない振る舞いを受けたと告発したアナ・ルックさんを指したものとみられる。
クリス氏はまた、調査官の聴取に、ローナン・ファローの告発女性に関する記事が出る前に、「他のジャーナリスト」に探りを入れたことを認めていた。これについて、クリス氏は調査官に「記者が別の記者に電話して、何が起きているのかつかむというのは、完全に普通のこと」と説明していた。
問題が最初に明るみに出たのは5月。ワシントンポスト紙は、クリス氏は、クオモ知事本人や側近らが参加する一連の会議に加わり、助言をしたと報じた。
ポスト紙は、クリス氏は舞台裏で戦略を提供しており、ニュースを報道する人々が、政治に関与するべきではないという、一般的なジャーナリズムの規範に反していると批判。ニューヨークタイムズは「政治家とジャーナリストの間の伝統的なバリアの侵害」と評し、政治家の兄を持つクリス氏の「ケーブルニュースの看板番組を運営する能力」に、改めて疑問を呈する出来事と指摘した。
この時、CNNは処分を与えず、クリス氏は、本人が述べている通り、時に兄の相談役になり、報道の客観性を保つことが困難であることから、当初からクオモ知事の疑惑報道に関与していなかったと釈明。一方、クオモ知事のスタッフとの会話への参加は「不適切」だったとし、今後は、会議に参加することはないと述べた。
クリス氏は8月、「訴え出た女性を攻撃したり、誰かに攻撃するようけしかけたことは一度もない。兄の状況について、マスコミに電話したことはない」と主張していた。
Celebrity Net Worthは、クリス氏の純資産は1,200万ドル(13.5億円)、CNNの看板番組「クオモ・プライム・タイム」から得る収入は年間600万ドル(6.7億円)と伝えている。
クリス氏の処分発表を受け、クオモブラザーズの宿敵、トランプ前大統領は「テレビ視聴者にとってすばらしいニュース」と皮肉を述べ、「いずれにせよ、フレドは去ったのだ!」と声明を発表した。なお、フレドは、映画ゴッドファーザーに登場する次男坊の名前。クリス氏は以前、一般人からフレドと呼ばれ、言い争いになったことがあった。この時、「フレドは弱い兄弟で、イタリア人を中傷する際に使われる」と説明。「侮辱だ。われわれにとってのNワードだ」と怒りをあらわにした。