ニューヨーク市のデブラシオ市長は10日、市内で発砲事件が増加していることを受け、「ホットスポット」を中心に、警察官によるパトロールを強化すると発表した。
警察発表によると独立記念日の週末、市内では44件の発砲事件が発生した。64人が銃撃を受け、11人が死亡した。昨年同期時の発砲事件は16件だった。デブラシオ氏は「実に厳しい週末だった」と述べ、「恐怖心の中で生活したり、若者に十字架を背負わせることはできない。この街では暴力は許容できない」と語った。
計画によると、犯罪が頻発しているハーレムのストリート20カ所以上と、低所得者向け公営住宅(NYCHA)を中心に警察官を配備する。地域の指導者らが警察官と共に見回りを行う。またユースタウンホールの開催や、バスケットボールなどを通じ、子供たちと交流を図る機会を設けるという。
市の計画に対し、刑事司法を専門とするジョン・ジェイカレッジ(John Jay College)のMaria Haberfeld教授は、ニューヨークポスト紙に対し「コミュニティメンバーを使用せず、集中的にパトロールすることが、唯一効果的に暴力行為を抑制することができる。」と述べ、「銃撃などが発生する可能性のある場所に、経験のないコミュニティの人々を送り込むことは、彼らが犠牲者になる可能性があるため、私は勧めない」と語っている。
なおハーレムでは先月末、発砲事件の対応に駆けつけた警察官の車両に向かって、群衆がガラス瓶などを投げつける出来事が発生している。
先月デブラシオ氏は、銃暴力を減少するための危機マネジメントプログラム「キュア・バイオレンス」(Cure Violence)を拡大すると発表している。犯罪の多い地域に、警察官ではなく「暴力を阻止する」よう訓練された人材を配置させると発表していた。
警察予算を10億ドル削減
ニューヨーク市では先月30日、2021年度予算が成立した。新型コロナの影響による財政赤字に加え、ジョージ・フロイドさんの死亡事件を契機に高まった「デファンド・ポリス」の声を背景に、警察部門の年間予算60億ドルから10億ドルが削減された。
同月、NYPDのダーモット・シエイ警察委員長は、凶悪犯罪や銃暴力を取り締まる私服警官の防犯部隊(anti-crime units)を即時解散すると発表。同部隊には600人が所属しており、別の部隊に配置換えされている。
警察発表によると、6月の発砲件数は205件で、前年の89件から130%増加した。殺人事件は39件で、前年同月の30件から30%増加。1996年以来最も高い水準となった。殺人事件の半数はブルックリン、ブロンクス、ハーレムにある10管区で発生している。死亡したのは、全員有色人種だったという。