ニューヨーク市のビル・デブラシオ(Bill de Blasio)市長は8日、ブロンクスのリンカーン病院で、滞在資格や支払い能力に関係なく、全住民に包括的な医療保障制度を提供する新たな計画を発表した。
計画は「NYCケア」(NYC Care)と呼ばれる。市長は、記者会見で「全ての人には、保険医療の権利が保障される。」と発表。対象は、約60万人の保険未加入者を含むニューヨークの全住民で、プライマリーケア及び、妊娠や精神医療などの特別医療の提供を保障する計画を明らかにした。保険未加入者の中には、約30万人の不法滞在者も含まれる。
具体的な運用については明らかにされていないが、対象者は、311やウェブサイトを通じてサービスの申し込みが可能で、ホットラインを通じて、すぐにかかりつけ医が紹介されるという。
NYCケアは、今年夏よりブロンクスエリアで開始し、2021年までに他の4区域に拡大される。試算によると、全区域で実行する場合の予算は、1億ドル(約108億円)となる。
新制度導入の背景には?
ニューヨーク市独立予算局(The Independent Budget Office,IBO) によると、2018年の予算計画では、市立病院の財政は1億5,600億ドルを超える財政不足が予想されており、2022年に財政赤字は18億ドルに膨らむと見込まれている。
ニューヨークタイムズによると、市長の側近スタッフは、NYCケア導入理由の一つとして、財政赤字について触れている。市立病院は、何年も深刻な財政赤字に見舞われており、より良い医療を提供しつつ、市立病院の財政負担の軽減が可能になるという。
市長は、保険未加入者は、初期診療を受けることができず、治療費用もないため、病気を悪化させ、最終的に緊急治療室(ER)に駆け込むケースが多いと現状を述べた。
タイムズは、最近実施された低所得者向けのメトロカード配布制度を例に上げ、早急な実現は難しいだろうと予測する。
(市は、当初連邦政府の定める貧困ラインを下回る80万世帯の家庭に対し、半額のメトロカードを支給すると発表していたが、先週に配布されたのは目標数字の4%にあたる3万世帯のみだった。)
会見中に増税はないとしているが、将来的に納税者負担が増加することを懸念する声も多い。また、低所得者だけでなく、不法滞在者を対象に含めたことに疑問を呈する声も見られる。