軍事支援をめぐってウクライナのゼレンスキー大統領をバッシングしたトランプ氏の長男ジュニア氏だが、かえってツッコミや非難にさらされる事態になっている。
ジュニア氏は、ゼレンスキー氏が米国に電撃訪問した21日の朝、ツイッターのアカウントを更新し「ゼレンスキーは基本、恩知らずの国際ウェルフェア・クイーン(生活保護の女王)だ」と批判した。
ゼレンスキー氏は訪問の前日、バフムートの前線にいる兵士らを訪問する様子を公開。その中で、さらなる軍事支援の必要性を訴える意向を示唆した。訪問は、議会が、450億ドル相当のウクライナへの追加軍事支援を含む歳入関連法案の審議のタイミングとも重なった。ちなみに法案は23日に可決され、近く成立する見通し。
「ウェルフェア・クイーン」の用語は、1970年代、福祉制度を悪用して政府の補助金を騙し取り、贅沢な暮らしをしていたシカゴの女性に関する新聞記事の見出しに始まり、1976年大統領選で、福祉制度改革を訴えたレーガン元大統領が事件に頻繁に言及し、広く知られるようになった。低収入の人々や、生活保護を受ける黒人女性に対する否定的なイメージを含む蔑称と考えられている。
ジュニア氏はこれを、諸外国に支援を訴えるゼレンスキー氏になぞらえたわけだが、この主張にはツイッター上で批判が相次いだ。
Business Insiderの政治記者、ジョン・ハルティワンガー氏は「核保有国から非情で謂れのない侵攻を受ける世界のリーダーを“ウェルフェア・クイーン”(人種差別的用語である)と呼ぶとはなかなかの選択だ」とジュニア氏を皮肉りつつ非難した。
父トランプ氏の問題と絡めた指摘も多く、反トランプ派の政治団体「リンカーン・プロジェクト」は、最近議会が公表したトランプ氏の納税記録の概要をまとめた表を示し、「君の父親は税金を払っていないだろう。口をはさむな」と一蹴した。
ジャーナリストのデヴィッド・コーン氏は、トランプ氏の2016年の大統領選出馬当時、ジュニア氏がロシア人弁護士と面会して対抗馬のヒラリー・クリントン氏の弱みを握ろうとしたスキャンダルを持ち出し、「米国の選挙介入を目論んだ国の人物と密会した息子が、プーチンと戦い自国を殺戮から守ろうとするヒーローを中傷?今までのジュニアの発言の中でも最低かもしれない。そういう意味では記録達成だ」と皮肉った。
反核活動家のデレック・ジョンソン氏は、「君がウラジミール・プーチンを愛するように君を愛してくれる人物を見つけろ」と、皮肉めいたジョークを飛ばした。
なお、ジュニア氏はさらにゼレンスキー氏の演説後、バイデン大統領の息子、ハンター氏の裸の写真を演説中のゼレンスキー氏と並べたフェイク画像をツイッターに投稿したが、ほどなくして規約違反を理由に削除された。ハンター氏をめぐっては、ウクライナの企業で役員を務めていた2015年、当時副大統領だった父親と会社幹部との面会を取り持とうとした疑惑が取り沙汰されている。