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「有罪評決は無効」麻薬王エル・チャポの弁護人が主張

麻薬王「エル・チャポ」ことホアキン・グスマン(64)受刑者の弁護士は25日、審理に際して、「陪審員による違法行為」と「過去に例をみない抑圧的な弁護の制限」があったと主張。評決は無効とされるべきと訴えた。ABCニュースが伝えた。

メキシコの犯罪組織シナロア・カルテルを率いて、世界最大規模の麻薬密輸活動を行なったグスマン受刑者は、2019年2月、数ヶ月間の審理の末に10件の訴因で有罪となった。7月に終身刑が確定し、現在、コロラド州にある最高警備レベルの連邦刑務所に収監されている。

ニューヨークにある第二上訴裁判所で、弁護士のマーク・ファーニック氏は3人の判事に対し、グスマン受刑者は独房監禁によって「認知的、感情的、精神的」能力が損なわれ、公平な審理を受けることができなかったと主張。「前例のない制限が、有意義な弁護活動の準備を不可能とした」と述べた。

これに対して、司法省のブレット・レイノルズ検事は、被告は「メキシコで2回も衝撃な方法で脱獄をはかり、ライバルを恫喝、殺害し、さらに牢屋の中から犯罪組織を指揮した」と指摘。審理中の拘束について、厳しい条件は必要不可欠との考えを示した。

これに加えて弁護側は、判事は陪審員らに対して、証拠に含まれなかった事件を含め、マスコミの報道やSNSを見てはならないとする命令に違反したかどうか強く問いただすべきだったと主張した。

評決後、陪審員の1人はViceの取材に匿名で答え、少なくとも5人の陪審員が、審理中にメディアの報道を見るなどして、判事の命令に違反したと明かした。

これには審議開始直前の、少女への性的虐待疑惑報道も含まれる。審議がはじまる2日前、検察が公開した書類を元に、被告が愛人を暴行したほか、少女達の飲み物に薬物を混ぜて、繰り返しレイプした疑惑があると報じられた。

弁護側は当時、疑惑を否定し、「確証がなく、不利で信頼性に欠け、裁判では認められない」と指摘していた。

Viceに答えた陪審員は、5人の陪審員が少女のレイプ疑惑を聞いていたのは「確実」で、判事にも嘘をついたと明かした。

ファーニック氏は「この男は、残りの生涯を箱の中で過ごそうとしているのだ」と話し、判事らに「彼のためにバイオリンを奏でてくれと頼んでいるのではないし、自分もそんなことをするつもりはない。これは全員が懸念すべき深刻な問題だ」と語った。

一方、検察側は、Viceの記事は不十分で、調査に値しないと主張。匿名で裏付けもなく、「伝聞とまた聞き」に過ぎないと反論した。

裁定は直ちに下されなかった。

ロッキー山脈のアルカトラズ

グスマン受刑者は、コロラドスプリングス南方の砂漠にある連邦刑務所局が管理するADXフローレンスと呼ばれる施設に収監されている。インディペンデントによると、警備レベルが「スーパーマックス」とされる国内唯一の刑務所で、「ロッキー山脈のアルカトラズ」とも呼ばれる。

400名近くが収容されており、その多くはテロリストやギャング、最高セキュリティレベルの刑務所にでさえも危険と分類された犯罪者たちだという。

現在、ボストンマラソン爆破事件の実行犯ジョハル・ツァルナエフや、1993年ワールドトレードセンター爆破事件の犯人ラムジ・ユセフ、数々の爆弾事件を起こした「ユナボマー」ことセオドア・カジンスキー、同時多発テロを共謀し、終身刑となったザカリアス・ムサウィ、オクラホマシティ連邦政府ビル爆破事件の実行犯テリー・ニコルズらが収監されている。

典型的な房のサイズは約2.1m x 3.6mで、約10cm四方の小窓が付いている。

元看守の話では、囚人は毎日一時間だけ、房外のケージに囲まれた場所で過ごす時間が与えられる。新聞とテレビは許可されているという。

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