ニューヨークの連邦裁判所に提出した訴状で、原告のバージニア・ロバーツ・ジュフレさんは、2000年初頭にジェフリー・エプスタイン被告から性的虐待を受けると同時に、権力者らに性的目的で「貸し出された」と主張。この中の一人が英国王室のアンドルー王子だったと訴えた。
ジュフレさんは、複数回にわたってアンドルー王子との性行為を強要されたとしている。1回目は、エプスタインの性犯罪を助けたとして昨年起訴されたギレーヌ・マクスウェル被告のロンドンにあるタウンハウスで、意思に反して性行為をさせられた。2回目はニューヨークにあるエプスタイン被告の家で、さらにエプスタイン被告が所有するバージン諸島にあるリトル・セント・ジェームズ島でも虐待を受けた。
ニューヨークでは、他の女性も同時に被害にあった可能性がある。訴状には、エプスタインの家で「マクスウェルが、原告ともう一人の被害者をアンドルー王子の膝に座らせた」とされている。
12件の連絡先 エプスタインの黒手帳とは
訴状ではまた、エプスタインの「黒手帳」に記載されていたアンドルー王子の連絡先が、少なくも12件あったとしている。
黒手帳の存在は、2015年にジャーナリストのニック・ブライアント氏がウェブサイト「GAWKER」に手帳のコピーを公開したことで、広く知られることになった。
手帳には97ページにわたって、1,571人の名前と5000件の電話番号、数千件のメール、家の住所が記載されている。このうちの約50人は丸で囲まれており、これには元イスラエル首相のエフード・バラック氏、ドナルド・トランプ前大統領、ハーバード大学ロースクールのアラン・ダーショビッツ教授が含まれている。
このほかにも、俳優のアレック・ボールドウィン、レイフ・ファインズ、グリフィン・ダン、故テッド・ケネディ議員、大富豪の故デービッド・コーク氏、映画のアンドリュー・ジャレッキー監督、など、著名人や権力者の名が記されているという。
ブライアント氏によると、手帳が始めて裁判所に資料として提出されたのは、エプスタイン被告の執事だったアルフレド・ロドリゲス氏が2009年に売り渡そうとした後だったという。
当時、エプスタイン被告の性犯罪の調べを進めていたフロリダ州警察およびFBIに対して、ロドリゲス氏は手帳の存在を明かさず、エプスタイン被告の被害者の訴訟を手がけていた弁護士に、5万ドルで販売しようとした。弁護士は、これをFBIに通報。その後、ロドリゲス氏は有罪となり、禁錮18カ月の刑を言い渡された。ロドリゲス氏は中皮腫に苦しみ、2014年12月に他界した。黒手帳については一度も話をせず、丸囲みの意味など、不明な点が解明されないままとなっている。