近年若者に人気のラップの一種、ドリルミュージックに批判的な考えを示しているニューヨークのエリック・アダムス市長は15日、ブルックリンのアーティストらと面会を行った。CBSニューヨークが報じた。
アダムス市長は先週の記者会見で、銃犯罪とドリル・ミュージックの関連に言及。トランプ前大統領がアカウントを凍結されたことを引き合いに出しつつ、ソーシャルメディアが規制するべきとの見解を示した。さらにプラットフォーム各社と面会し、「市民および企業的責任」について話し合うと語っていた。
6日、18歳のラッパー、Chii Wvttz(本名 ジェイクアン・マッケンリー)が、ブルックリンのベッドスタイで車の中にいたところ、銃撃を受け死亡した。この約一週間前、同じくブルックリン出身のラッパー、Tdott Woo(本名 タジェイ・ドブソン)が、レーベルとの契約を結んだ直後、カナーシーにある自宅前で射殺された。2人ともブルックリンのドリルシーンで活躍が期待されていた。
ブルックリン地区のエリック・ゴンザレス検事局長によると、ドリルアーティストらは、ライバルギャングの縄張りに乗り込んで、SNSでライブ配信をするなどして、互いに挑発行為を繰り返しているという。同氏は「最近起きた多くの発砲事件は、ドリルと直接関係がある」と断言。「ドリルのラップビデオが、若者の命を奪っている」「報復の欲求を煽っている」と指摘している。
対談の詳細は明らかにされていないが、市長は16日の会見で、ラッパー軍団と「すばらしい会話」をしたと明かした。ドリルラップを規制する意向はないとした上で、殺害した敵に関する投稿をしたり、これに対抗する暴力的な人々が問題だと指摘。「彼らは私の話に耳を傾けた。われわれは、数日中にこの問題への対策を展開する」と語った。
ブルックリンのラッパー、Maino(メイノー)のインスタグラムに投稿された動画には、アダムス市長の周りを、ラッパーらが取り囲む姿が撮影されている。コメント欄には、Fivio Foreign、B-Lovee、CEO Slow、 Bucksy Luciano、Bleezyといったアーティストの名前がタグ付けされている。
メイノーは動画の中で「ニューヨークのドリル・ラップについて、カルチャーを暴力と結びつける論調がたくさんある。市長と話をする機会を作りかった」と説明。これに対して、アダムス氏は「一緒に対策を展開するつもりだ」と語り、握手をして締め括った。
会談に同席したBleezyは、CBSの取材に「何が起きているのか、完全な理解を得ることができた」と、生産性のある話し合いができたと強調。一部のアーティストに行き過ぎた行為があると認める一方、「コミュニティには、希望がない。機会がまったくないんだ」「われわれは音楽を作って、ここから脱却しようとしているにすぎない」と、音楽の規制よりも地域の問題を解決する必要性を訴えた。