1993年にニューヨークのエリック・アダムス市長から性的暴行を受けたとする女性が、市長と市警察局に対して500万ドルの支払いを求める民事訴訟を提起した。
アダムス氏は疑惑を否定している。
訴状は感謝祭の前日の22日、マンハッタンにあるニューヨーク州裁判所に提出された。
原告の女性、ローナ・ビーチ・マトゥラ氏は当時、アダムス氏とともに市の職員だったとしている。アダムス氏は1993年、後にニューヨーク市警察に吸収されることになる市交通警察に勤務していた。
性的暴行に加えて、今回の法的措置は雇用差別や報復、敵対的職場環境、意図的に精神的苦痛を与える行為といった州および市の人権法、性別に基づく暴力被害者保護法の違反に関するものだとしている。
ニューヨーク州では昨年5月、特定の性被害で出訴期間を超えたものに関して、同年の11月24日から1年間に限って提訴を可能とする「成人サバイバー法(Adult Survivors Act)」が施行された。女性が裁判所に訴状を提出したのは、この期限が切れる2日前だった。
ニューヨークタイムズによると、マトゥラ氏は裁判を繰り返しており、2008年には航空会社の従業員のせいで車椅子から転落して背中を負傷したとして、アメリカン航空を提訴した。4日間の審理が行われ、陪審は航空会社に有利な評決を下したという。
この翌年は、マイアミ・デイド郡の公立学校委員会を訴えた。生徒から暴行された後、補償金を拒否されたというものだったが、一審で敗訴した。判決の一部について上訴したが、再審を勝ち取ることができなかった。
昨年は、フロリダにあるカジノで常連客が自分に倒れ込んだと主張。カジノは施設の維持管理を怠ったとして提訴した。まだ判決にはいたっていないという。
なおAmazonでは、同名の著者による訴訟に関する本が販売されている。内容は、実際に自分が最高裁に上告した際に提出し、認められた請願書のコピーで、説明には「少額訴訟、民事訴訟、巡回裁判所、家族訴訟、下級控訴裁判所、および米国最高裁判所」を含む「さまざまな裁判所で私自身と他の人のために費やした長年の闘い」で得た法的知識をもとに作成したものと記されている。
感謝祭のお祝いムードが漂う中、険しい表情で記者団の取材に応じたアダムス氏は、「このようなことは決して起きていない。告発者に会ったことも覚えていない」と疑惑を全面否定した。
成人サバイバー法は、2019年に成立した「児童被害者法」(Child Victims Act)をモデルにしたもので、過去一年で2,500件以上の申立てが提出されたという。
著名人が被告となるケースもあり、トランプ前大統領は今年5月、1996年に市内のデパートでレイプされたとして訴えた作家のジーン・キャロル氏との裁判で敗訴し、500万ドルの支払いを命じられた。
昨日はハードロックバンド「ガンズ・アンド・ローゼズ」のフロントマン、アクセル・ローズが、1989年に市内のホテルで性的暴行を受けたとするペントハウス誌のモデルから訴えられたと報じられた。