トランプ「口止め料」裁判はピタゴラスイッチ?専門家が疑問

219

15日からマンハッタンの裁判所で始まったトランプ前大統領の公判。2週目は証人尋問がスタートし、アメリカン・メディアInc.(AMI、現在のA360 Media)のデビッド・ペッカー元CEO兼会長、トランプ氏の長年の補佐役だったローナ・グラフ氏、口止め料の支払いのためにマイケル・コーエン氏のペーパーカンパニーが口座を開設したリパブリック・ファースト銀行の元専務、ゲイリー・ファロ氏が証言台に立った。

トランプ氏は、不倫関係にあった元ポルノ女優ストーミー・ダニエルズ氏に支払われた口止め料に関して、会計を不適切に処理したとして34の業務記録改ざんの罪で起訴されている。

口止め料は2016年選挙戦終盤にマイケル・コーエン氏が支払い、トランプ氏は分割で払い戻したが、この際、小切手や内部記録の名目を「存在しないリテーナー契約に従って提供された法律サービスの支払い」と偽装したとされる。ニューヨーク州では業務記録の改ざんは通常は軽罪として扱われるが、検察は「欺く意図があり、もう一つの犯罪を隠蔽する意図」がある場合は重罪にあたり、34件の記録の改ざんは「その他の犯罪をもみ消す」ために行われたと主張している。

FOXニュースのコントリビューターでジョージ・ワシントン大学ロースクールの教授、ジョナサン・ターリー氏は、27日にThe Hillに掲載したオピニオン記事で、マンハッタンのアルビン・ブラッグ検事のセオリーを「ルーブ・ゴールドバーグ・マシン」(ピタゴラスイッチのような連鎖反応する機械)になぞらえ、「法律を真剣に受け止めていない法律家による狂った検察マシン」と揶揄した。

ターリー氏は、検察は「もう一つの犯罪」について、2週目になってようやくそれが「違法な手段により公職への選出を促す、または阻止するために共謀すること」を禁じるニューヨーク州の選挙法17-152への違反であることを明らかにしたとした上で、「それが真の犯罪であるならば、州の検察ではなく連邦当局によって訴追されるべきである」と主張。これも軽罪であるが、「完全に合法的な機密保持契約の支払い」を重罪にするために、検察は軽罪から軽罪を引き起こすという「信じられないほど創造的な循環論法」を編み出したと皮肉った。

Advertisement

さらに、起訴内容に含まれていない不倫の揉み消しに関わったペッカー氏の証言を投入して事件を歪曲していると指摘。判事は「奇妙な機械がピーピー音を立てて旋回する」様子を満足げに聞いており、それこそがブラッグ検事の狙いと批判した。

ペッカー氏は2016年、トランプ氏とかつて愛人関係にあったプレイボーイの元モデル、カレン・マクドゥーガル氏から、不倫話を口外しない代わりに15万ドルで買い取った。

なお、ペッカー氏は反対尋問で、ネガティブ情報を潰すことはトランプ氏が大統領選に名乗りを上げる数十年前から行っており、それもトランプ氏に限らず、アーノルド・シュワルツェネッガーやタイガー・ウッズといった他の有名人に対するものもあったと認めたほか、トランプ氏はマクドゥーガル氏に対する支払いに直接関与していないと証言したという。

ターリー氏はFOXニュースの番組にも出演し、ペッカー氏のこうした証言は検察にとって「大惨事」だと主張しつつ、事件は「自重で潰れるだろう」と述べるなど、訴追は成功しないとの見方を示した。

第17-152条が発動されるのは稀とされ、複数の専門家はビジネスインサイダーの取材に、過去に使用された例を目にしたことはないと答えている。このうちの一人、ブルックリンの弁護士で州議会の元上院議員だったマーティン・コナー氏は「53年間選挙法の実務に関わってきたが、使用されるのを聞いたことがない」と明かした。コナー氏はブラッグ氏の戦略に懐疑的であるものの、最終的には有罪につながるだとうと予測を示している。

Mashup Reporter 編集部
Mashup Reporter 編集部です。ニューヨークから耳寄りの情報をお届けします。