ニューヨークの地下鉄とバスを運営するMTAは3日、ニューヨーク地下鉄利用者のうち、毎日約20万8,000人が無賃乗車していると発表した。無賃乗車率は全体の4%にあたり、2011年に比べ4倍に急上昇したという。
バスの無賃乗車数はさらに多く、全体の16%にあたる約34万8,000人となる。後部ドアを使用する人もいれば、料金を支払わず前から乗車する人もいる。ドライバーは襲われる恐れがあるため、注意をためらうことが多いとMTAは述べている。2008年には運賃支払いをめぐる口論の末、ドライバーが殺害される事件も発生している。
地下鉄とバスの無賃乗車による今年の損失は、2億1,500万ドル(約242億円)にのぼる。
増加の原因は?
MTAのアンディ・ベイフォード(Andy Byford)氏は「深刻化している。」と無賃乗車の問題を認めた。具体的な原因は明らかにされていないが、いくつかの要因が考えられるという。
ニューヨークタイムズによると、上昇し続ける地下鉄の運賃を払えない人もいれば、劣悪なサービスへの抗議を示す人がいる可能性があるとMTAは分析する。
今年初め、マンハッタン地区検察局のサイラス・バンス Jr.(Cyrus Vance Jr.)検事は無賃乗車を行った人を起訴せず、非犯罪化すると決定した。逮捕ではなく、召喚状もしくは刑事裁判所への出廷を命じるDAT(Desk Appearance Tickets)の発行を採用したことも一因として考えられている。
MTAのジョー・ロタ(Joe Lhota)会長は、乗車料金を支払う顧客に対して不公平だとして、この決定を批判した。検事の決定により、今年無賃乗車による逮捕者は大幅に減少している。
無賃乗車を行う人は、回転式のバーを飛び越えるよりも、非常口を使って忍び込む人が多いようだ。以前は無賃乗車防止のため、ドアが一定時間開いたままの場合、大音量の警報が鳴ったが、当局は抑止力がないとして、2014年から警報は停止された。
防止策は?
無賃乗車を防止するため、MTAは非常出口にスタッフや警察官を配置し、侵入者を物理的に阻止することを検討している。また監視カメラの増設も計画されている。
MTA役員のローレンス・シュワルツ(Lawrence S. Schwartz)氏は、無賃乗車数を削減しない限り、運賃値上げはすべきではないと主張する。
一方でMTAの役員や活動家からは、新たな計画により、有色人種が槍玉に上がるのではないかと危惧する声も上がっている。