FBIがフロリダ州のトランプ氏の邸宅マールアラーゴから押収した資料の中に、イランと中国の軍事機密に関するものが含まれていると、内部事情に詳しい関係者らが明かした。外部に漏れた場合、米国の諜報活動の内情が明るみに出る可能性があるという。ワシントンポスト紙が報じた。
匿名の情報筋によると、FBIが押収した資料のうち少なくとも一つに、イランのミサイルプログラムに関するものが含まれている。対中国の諜報活動に関する機密性の極めて高い資料も複数あるという。
これらの情報が外部に知られた場合、米国の諜報活動を支援する人々に危険が及ぶほか、情報収集の方法も漏れる恐れがある。さらに他国、特に敵国から過去の米国の諜報活動に対する報復を受ける恐れもある、極めて危険なものと専門家は指摘する。
ワシントンポスト紙は先月、情報筋の話として、FBIが押収した資料に核戦力を含む外国の軍事情報が記されていると報じた。国は特定されておらず、今回の報道で挙げられた資料と同じものを指すかは不明。ただ、イランのミサイルプログラムと核戦力は欧米が注視する関心事で、米情報機関のこれまでのまとめでは、イランは核兵器の生産に十分な核分裂性物質を所有しているが、核弾頭を長距離弾道ミサイルに搭載するといった実戦的な技術開発には至っていないとしている。
資料内の機密事項の大半は情報元の記載がないが、米情報機関が誰からどのように情報を入手しているかを他者が割り出すには重要な鍵になり得るという。中には国家安全保障担当の幹部クラスにしか知らされない最高機密計画に関する内容もあり、こうした計画は大統領、政府閣僚、閣僚に近いレベルの高官のみが詳細を知り得る人物の範囲を指定できると、情報筋は明かしている。マールアラーゴの捜索にあたった捜査官にも、当初は資料の中身を見る権限が与えられなかった。
FBIは今年8月のマールアラーゴ捜索で、トランプ氏が大統領退任時にホワイトハウスから持ち出したという資料1万3000点を押収。そのうち103点に機密事項が含まれ、そのうち18点は最高機密に分類されるものだった。トランプ氏や側近らの行為は機密情報の不当な取り扱いや、政府記録の妨害・破壊にあたる可能性があり、司法省は、スパイ法違反などで刑事訴追する可能性を視野に捜査を進めている。
トランプ氏「資料騒動のでっちあげ」
一方トランプ氏は、大統領退任前に資料の機密解除をしたと主張しており、自宅に持ち帰ったことに落ち度はないとしている。ただ、「大統領は頭で考えただけで機密解除ができる」などとするトランプ氏の主張は、国家安全保障の専門家から嘲笑を買っている。
今回のワシントン・ポストの報道にはコメントしていないが、報道後、トランプ氏はSNSに「資料騒動のでっちあげ」と書き込み、「NARA(米国立公文書館)を含む、腐敗した攻撃的な政府機関を誰が信じる?」「NARAやFBIが書類の中身を書き換えたり削除したりしないと、誰が分かる?分からないだろう」など、信頼性を低下させるコメントを投稿している。
トランプ氏をめぐっては、別件でも刑事訴追の可能性を視野に捜査が進められている。2020年の大統領選で選挙結果を覆すよう当局に圧力をかけた疑いでは、司法省やジョージア州の検察が捜査しているほか、昨年1月の連邦議会議事堂襲撃事件に関して、米下院特別委員会がトランプ氏の責任を追及するため調査を行っている。同委員会は21日、トランプ氏本人の召喚を求めた。