クラトムを摂取して死亡した女性の遺族が販売した会社を訴えた裁判で、フロリダ州の連邦地方裁判所は26日、企業に1,100万ドル(約15.5億円)の損害賠償の支払いを命じる判決を下した。
4人の子供の母親だったクリスタル・タラヴェラさん(39歳)は2021年6月の父の日、自宅で倒れているのが発見され、搬送先の病院で死亡が確認された。
マイアミヘラルドが訴状を元に伝えたところによると、その日の朝、末っ子の実の父親である男性が、タラヴェラさんがリビングルームで、うつ伏せになって意識不明の状態で倒れているのを発見した。
隣で子供が遊んでおり、コーヒーカップとクラトムの抽出成分が入った「スペースダスト」と書かれた開いた袋があった。
クラトムは東南アジア原産の樹木で、米国ではオンラインや小売店で粉末や液体製品が販売されている。クラトムの主要成分の「ミトラギニン」と「 7-ヒドロキシミトラギニン」は脳内のオピオイド受容体と相互作用されるとされ、使用者からは、興奮剤のような効果とオピオイドや鎮静剤のような効果の両方が報告されている。
タラヴェラさんは検死により、死因を「急性ミトラギニン中毒」と判定された。検視官は「高濃度のミトラギニンは呼吸不全などオピオイドのような作用を引き起こす」と記しているという。
父の日の翌日から大学に通うことになっていたデヴィン・フィリッペリさんが遺族を代表し、11月にクラトム製品の販売サイト、Kratomdistro.comの運営会社Grow.LLCとオーナーのショーン・ハーダー氏を提訴した。
タラヴェラさんは、クラトムについて数年前に友人から教わったという。フィリッペリさんは、同社のオンラインで「安全で自然な栄養補助食品」との説明を信じて購入したと主張した。
なおタラヴェラさんは、ホスピスケアで正看護師として働いており、当時マネージャーに昇進したばかりだったという。
判事は判決にあたり「もちろんタラヴェラさんの子供たちが、母親の死によって耐えなければならない痛みと苦しみを埋め合わせられる金額はない」とした上で「それでも法は、いかに不十分であろうと、被告がいくらかを支払わなければならないことを認めている」と文書に記したという。
2021年の調査では、米国内のクラトム製品の使用者は推定170万人に上った。
食品医薬品局によると、痛みや咳、下痢、不安やうつ病、オピオイド離脱症状の緩和など自己治療の一環として用いられている。
クラトムまたは「ミトラギニン」と「 7-ヒドロキシミトラギニン」を含んだ製品で、医薬品として承認を受け、合法的に流通しているものはない。安全性を保証する十分なデータがなく、栄養補助食品として販売することも禁じられている。