金融やメディア、アート、政治家などの有力者が集う「パワーランチ」スポットで知られる高級レストラン「フォー・シーズンズ・レストラン」(Four Seasons Restaurant)が11日閉店した。1959年創業のアメリカン・キュイジーヌレストランは、60年の歴史に幕を閉じた。
フォーシーズンズは2016年まで、パークアベニューのシーグラム・ビルディング(Seagram Building)で営業していた。しかし2000年にビル所有者となったアビー・ローゼン(Aby Rosen)氏が、2016年フォーシーズンとの賃貸契約を終了したため、レストランは一時閉店を強いられた。(元のフォーシーズンズは、「ザ・グリル」と「ザ・プール」と名称を変更し、営業を継続している。)
2年間休業の後、3ブロック離れた現在のイースト48ストリートへと移転し、昨年8月に営業を再開していた。
1996年にマネージング・パートナーに就任したアレックス・フォン・ビダー(Alex von Bidder)氏は、ニューヨークタイムズに対し、「私たちはうまく経営することができなかった。レストラン業界は変わった。」と述べた。さらに、閉店は業績に満足していない投資家の決定だと語った。
フォーブスによると、ビダー氏らは、レストラン再開にあたり、常連客から2.5万ドルから最大100万ドルまで合計3,000万ドル以上以上を調達していた。
もう一人のマネージング・パートナー、ジュリアン・ニッコリーニ(Julian Niccolini)氏は昨年12月、複数のセクハラ疑惑により、職を退いていた。
レウストランを創業したブロンフマン(Bronfman)家の1人、エドガー・ブロンフマン・ジュニア氏は、うまく行くと思っていたが、常連客を満足させることができなかったと語っている。
ニューヨークで最もパワフルな場所
オリジナルのフォーシーズンレストランは、建築家のフィリップ・ジョンソン(Philip Johnson)氏と、ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ(Ludwig Mies van der Rohe)氏が設計した。
ピカソの巨大なタペストリー「Le Tricorne」や リチャード・リッポルド(Richard Lippold)の彫刻、ダイニングルームの中央のプール、美術館並みの家具を揃えていた。1989年に、シーグラム・ビルディングと共にニューヨ-ク市の歴史建造物に指定されている。
料理批評家で、フォーシーズンズ・レストランの著書を手がけたジョン・マリアーニ(John Mariani)氏は、オリジナルの店は1970年代半ばまで利益を生み出す店ではなかったと述べる。
作家のマイケル・コーダ(Michael Korda)氏が、1977年にタイムズに寄稿したコラム「Le Plat Du Jour Is Power」の中で、街の中で最もパワフルな場所は、フォーシーズンズのグリルルームだと述べ、ランダムハウス社のジェイソン・エプスタイン(Jason Epstein)氏、パトナム社のフィリス・グラン(Phyllis Grann)氏など常連客の顔ぶれを紹介した。エスクウェイア誌の1979年10月号でも、リー・アイゼンバーグ氏が、フォーシーズンズは「米国の最もパワフルなランチ」と称するコラムを掲載した。
フォーシーズンズは、ファーム・トゥ・テーブルの概念が根付く前から、旬の食材を使用した料理を提供し、のちに「ニュー・アメリカン・キュイジーヌ」(New American Cuisine)と呼ばれた。
レストランナーのジョー・バウム(Joe Baum)氏らが手がけるレストランは、アメリカンキュイジーヌの水準を引き上げた。
昨年再開した店は、オリジナルよりもはるかに小さく、マリアーニ氏は「壮大さも華やかさもなく、独特のニューヨークらしさのようなのはなく、どこか他の都市のもののようだ。」と述べている。
ニューヨークタイムズの料理批評家のピーター・ウェルズ(Pete Wells)氏は、レビューの冒頭でマネージング・パートナーのニッコリーニ氏のセクハラ問題を大々的に取り上げ、格付けを二つ星から一つ星へと下げた。