連邦取引委員会(FTC)は26日、アマゾンを反トラスト法に違反した疑いで提訴した。原告にはニューヨーク州やコネチカット州、ペンシルバニア州など17州が加わった。
FTCは声明で、アマゾンは「相互に連動した反競争的かつ不公正な一連の戦略」を用いて「違法な独占力を維持」していると説明。「価格や品揃え、品質の競争を抑制し、現在または将来のライバル企業が大量の購入者や販売者を惹きつけないようにすることで、自社の優位性を脅かすことができないようにしている」と主張した。
ワシントン州の連邦地方裁判所に提出された訴状では、アマゾンは「オンライン・スーパーストア市場」と「オンライン・マーケットプレイス・サービス市場」の両市場において、「価格競争を抑制する排他的な反値下げ行為」と「フルフィルメントサービスの使用の強制」を通じて違法な独占を維持していると説明している。
オンライン・スーパーストアは、路面店や単なるオンライン・ストアと異なり、「ストアフロントを通じた幅広く深い品揃えの提供」「洗練されたフィルタリングおよび発見ツール」「リサーチツール」「親しみがあり便利な決済体験」などを特徴とし、「スケールの経済、ネットワーク効果、レピュテーションバリア、買い物客の切り替えコスト」といった点で高い参入障壁を有する市場であると説明。アマゾンは60%のシェアを保持しているとした。
マーケットプレイス・サービスは、サービスを購入するセラーに「確立された米国のオンライン顧客ベースへのアクセス」をはじめとした「独自の一連のサービス」を提供するもので、オンライン・スーパーストアと同様の参入障壁を有し、アマゾンは同市場の66%以上を獲得していると説明している。
違反行為の柱に挙げた「排他的な反値下げ行為」に関して、アマゾンには、他のストアで自社よりも安く売っているセラーがカートボックスに表示されないようにしたり、より重要なセラー(Amazonブランド登録者)に対してマーケットプレイスからのアカウント削除などの強力な罰則を伴う契約上のしばりを設けるなど、さまざまな戦術を用いているとした。同社には、ネットの価格を常に巡回する価格監視チームがあるという。アマゾンでの購入の大半はカートボックスを通じて行われており、多くのセラーにとってカートボックスは「生存の脅威」と強調した。
また、アマゾンはセラーに値段を下げさせるだけではなく、手数料を年々上げてきた点に言及。値上げを迫られたセラーは、他サイトでも同様の価格にしなければならず、結果として「買い物客はアマゾン以外の場所で買う場合でも、人為的に高い価格に直面することになる」と指摘した。「総合すると、アマゾンの反値引き行為は、両市場の競争を阻害し、競合他社がスケールすることを否定し、セラーに損害を与え、買い物客から低い価格を奪うことによって、アマゾンの独占を維持するのに役立っている」と主張した。
これに加えて、アマゾンは、FTCが「ファーストパーティ反値下げ戦略」とよぶところの自社販売製品に関するプログラムによっても、セラーおよび他サイトでの値下げ販売を抑制していると指摘した。
「フルフィルメントサービス(FBA)の使用の強制」について、アマゾンの実質的な顧客基盤(プライム)へ完全にアクセスするための前提条件になっていると説明。プライム資格はセラーにとってカートボックス獲得のために重要で、資格を放棄したセラーは事実上、アマゾンのストアフロントから姿が消えると述べた。
FBAはアマゾン以外の注文にも対応しているが、アマゾンの縛りがなければ、より簡単にフルフィルメントが可能な独立した事業者を好むセラーが多いとした上で、「セラーに複数のオンライン・スーパーストアとマーケットプレイスで同じ商品を高く販売させることで、アマゾンはライバル企業が成長し、勢いを獲得し、十分な買い物客を集めてスケールし、有意義に競争する能力を制限している」と主張した。
これらの反競争的な戦術が合わさることで全体的な排除効果が増幅され、アマゾンは「両方の市場を通じた独占力をさらに強化」していると主張した。
訴状では、違法行為の継続を禁止するとともに、再発防止に向けた「構造的救済」を求めた。具体的に示されていないものの、CNBCは構造的救済には、事業の解体や売却などを指す傾向があると伝えている。
アマゾンの2022年の売り上げに占める独立セラーの割合は60%を超えた。非営利団体「Institute for Local Self Reliance」によると、2023年上半期、同社が国内セラーの売上から徴収した手数料は45%に達した。2014年の19%から大幅に増大した。