モデルでジャスティン・ビーバーの妻、ヘイリー・ビーバーがSNSでリップの塗り方を紹介したところ、批評家から「文化の盗用」だと非難の声が上がった。
ヘイリーはTikTokで「秋への備え。ブラウニー・グレーズド・リップ」とキャプションをつけ、ブラウンのリップライナーで唇の輪郭を描いた後、クリアカラーのリップグロスをつける秋のメイクアップ術を紹介した。
この動画には、「ママが若いころやってた」「ラティーナなら誰でもこのメイクをやったことがある」「黒人とラティーナのお姫様は、私が生まれる前からこれをやってる」など、かつて有色人種の女性の間で流行ったメイクだと指摘するコメントが多数投稿されている。
フロリダ大学のジェンダー・セクシュアリティ・女性学研究ジリアン・ヘルナンデス教授は米ABCの番組で、ヘイリーのメイクは「ワーキングクラスの黒人やラテン系の女性を、過度に性的化したもの」と指摘。「ゲットーやラチェット」などと呼ばれ、アフリカ系やラティーナの女性は、体や髪の見せ方を「侮辱されてきた」と述べた。
ニューヨークタイムズのスタイルレポーター、サンドラ・E・ガルシア氏は同番組で、「黒人とラテン系の女性は自分達で考えたメイクのやり方が理由で、他の人種よりも劣っているとみられきた」と述べた上で、「白人の女性が同じことをすると、そのリップグロスは完売となり、いまや彼女はトレンドの顔となっている」と矛盾を指摘。「ダブルスタンダード」だと主張した。
こういった傾向は、スペイン人であるピカソが、アフリカの芸術からインスピレーションを受けてアートを作成した19世紀まで遡ると説明。「ピカソが革新的な現代美術家となった理由は、アフリカ人の仮面を見ていたからだ」「西洋のイノベーションの多くは、植民地主義から生まれた」と述べ、ここから文化の盗用が生まれたと主張した。結果として、黒人やラテン系の女性はしばしば、彼らのファッションやトレンドから利益を享受することができないと語った。
さらに、現代社会における美の評価について、「その人々のアイデンティティによって、不均等な価値が生じる」と批判。リップグロスやリップライナーなど、ささやかなことと思うかもしれないが「体系的な問題」だと述べ、「損をしているのは黒人とラテン系であり、彼らはアイデンティティの一部や、自尊心を失っている」と話した。
一方で、他の文化からインスピレーションを得ることは問題ないとしつつ、「しかるべき功績を与えることが重要だ」とも述べ、この問題をきっかけに、黒人やラテン系のクリエイター、美容のインフルエンサーに「ハイライトが当たる」プラットフォームになることを願うと語った。
ABCニュースがシェアしたニュースのコメント欄には、「黒人とラティーナが長年批判されてきたことでも、白人がやると拍手喝采を浴びる。これを問題と思わない人こそが問題だ」と同意するユーザーがいる一方、「これのどこがニュース?」「みんなそんなことで腹を立てているの?恐ろしい世の中だ」と特に問題ではないとするコメントも多数投稿されている。
別の女性は、自分を有色人種だと紹介した上で「90年代から後半までは、有色人種以外も茶色のリップをつけていた。私はヘイリーのリップに気分を害したりしない」と擁護した。また口紅の色よりも、ハリケーンや薬物乱用、子供の人身売買など他に心配すべきことは多いと指摘する意見も投稿されている。